日本代表再登板のFCバルセロナ監督のオルテガ氏は6月中旬合流の見通し

 パリ五輪に臨むハンドボール日本代表の監督に、FCバルセロナ監督のカルロス・オルテガ氏(52)の就任が内定した。7年前に日本代表監督を務めた同氏の復帰は3日に発表されるが、現在指揮をとるバルセロナの公式戦日程があるため、合流は6月になる見込み。欧州屈指の名将は、わずか1か月という異例の準備期間でパリ五輪に臨む。

 オルテガ氏は、2月に退任したダグル・シグルドソン監督(50)にも負けない実績を持つ。選手としてスペイン代表で活躍し、バルセロナでは欧州CLに6回優勝。21年に古巣の監督に就任すると21-22季の欧州CLを制するなど選手、監督として数々のタイトルを獲得している。

 日本協会は早くからオルテガ氏の代表監督復帰を念頭に、関係者と接触してきた。シグルドソン監督退任時には、すでに次期監督候補としてリストアップもされていた。本人も短期間ながら指揮をとった日本代表への思いは強く、アジア予選やアジア選手権もチェック。再び指揮をとることにも前向きだったという。

 もっとも、現在バルセロナがシーズン中なこともあって交渉は簡単ではなかった。クラブとの契約が26年まであるため、当初から濃厚だったのは五輪限定のワンポイント契約。3月下旬の現地報道によれば、クラブ側がパリ五輪での日本代表指揮を容認したことで、契約が一気に進んだ。

 14連覇に向けて首位を独走するリーガの日程は5月25日まで、現在ベスト8に残っている欧州CLでファイナル4(準決勝、決勝の集中開催)に残れば、6月9日までクラブを離れることはできない。パリ五輪の男子競技スタートは7月27日、6月には強化試合も予定されるが、あまりに時間が少ない。

 一方で「オルテガなら大丈夫」という声も強い。リオデジャネイロ五輪予選で敗れた日本代表の監督に就任したのは16年1月。わずか1か月の契約期間でアジア選手権3位に入り、翌17年1月の世界選手権出場権を獲得したことで1年契約が延長された経緯もある(世界選手権は22位)。「日本のハンドボールを知っているし、選手の特徴も分かっている。1か月あれば十分」と話す関係者もいる。

 新監督との契約はパリ五輪終了後まで。その後は未定。もちろん、バルセロナとの兼任監督を続ける可能性もある。ハンドボール界ではクラブと代表の監督を兼ねることは珍しくないし、7年前の同氏もKIFコペンハーゲンの監督をしながらの兼任だった。もっとも、欧州と日本の距離的な問題や資金面などで兼任へはハードルもある。当面はパリ五輪に限った契約の方が現実的。それでも、日本協会は15年世界最優秀監督のシグルドソン氏を手放してまで、オルテガ氏に日本代表を託すことを決めたのだ。

 選手と監督で欧州CLを制した同氏の実績は、サッカーで言えばバルセロナのクライフ監督やレアル・マドリードのアンチェロッティ監督レベル。短期の指揮だけに未知の部分はあるし、アジアと五輪では舞台が違う。それでも、この7年間で成長した選手たちが新監督のもとでさらに伸びれば、パリでの大暴れも期待できる。五輪で世界を驚かせる「彗星JAPAN」が見てみたい。(荻島 弘一)

(THE ANSWER編集部)