JR山手線、京浜東北線、東京メトロ千代田線、日暮里・舎人ライナーの4線が利用できる西日暮里駅(荒川区)駅前で再開発が予定されています。コンパクトな駅前に交通広場、公共施設などを作る計画もあり、駅前の風景は大きく変わりそう。日暮里駅、谷根千徒歩圏の街の様子をご紹介しましょう。

西日暮里駅。右手に見えているのが道灌山通り。通りを挟んだ向かい側が再開発エリアになります(筆者撮影)

1971年に開業した山手線で二番目に新しい駅

山手線では二番目に新しい西日暮里駅。京浜東北線は快速運転中は停車しません(筆者撮影)

2020年に高輪ゲートウェイ駅が開業するまでJR山手線で一番新しい駅は西日暮里(荒川区)でした。そのため、新駅開業時に西日暮里駅では「二番目じゃダメなんでしょうか」といったポスターが多数、掲示されて話題になりました。鉄道好きな方なら覚えていらっしゃるかもしれません。

その西日暮里駅が開業したのは1971年。1960年代の高度経済成長期には毎年のように通勤通学客が増加、そこで国鉄(現在のJR東日本)は常磐線を複々線化して快速線と緩行線(各駅停車)に分け、緩行線を新規に建設する営団地下鉄(現在の東京メトロ)千代田線と接続、相互直通運転させることを考えました。

そこで千代田線と山手線の乗換駅をどこにするかが検討され、日暮里駅と田端駅間に新しくつくられたのが西日暮里駅でした。日暮里駅近くに作るという案などもあったそうですが、日暮里駅周辺は民間の所有地が多く、買収費が多額に及ぶ、それ以外の案では連絡通路が長くなるなどとそれぞれに問題があり、その結果、間の地点として現在の西日暮里駅が選ばれました。

日暮里駅、田端駅と近く、乗換客が多い

西日暮里駅前の通りから日暮里駅方面を見たところ。写真中央の道をまっすぐ行けば日暮里駅前の再開発エリアの横に出ます(筆者撮影)

そのため、西日暮里駅とお隣の駅である日暮里駅との距離は約500メートル、田端駅との距離は約800メートルと非常に近く、特に日暮里駅までは徒歩圏と言っても良いほどになっています。

JR線から東京メトロ千代田線への乗り換えエリア。初めて訪れるとどこから外に出て良いのか、迷ってしまうことも(筆者撮影)

こちらはJR線の出入り口。千代田線には乗れないことが分かりやすく掲示されています(筆者撮影)

元々、乗り換えのために作られていることから、今も西日暮里駅は乗換客が非常に多い駅になっています。駅の作り自体が乗換客を優先しており、山手線、京浜東北線から千代田線への乗り換え通路は広く、分かりやすいのに比べ、外に出るための改札は小さく、しかも一ヶ所だけ。知らないと迷ってしまうほどです。駅側もそれを理解しているのでしょう、構内には誘導のための表示が何ヶ所も掲出されています。

駅は離れるものの日暮里・舎人ライナーも利用可能

現在のところ、日暮里・舎人ライナーに乗り換えるためには駅を出て尾久橋通り沿いの通路を歩くことになります(筆者撮影)

さて、その西日暮里駅は山手線、京浜東北線(快速は停車しません)、東京メトロ千代田線に加え、もう一路線、駅自体は少し離れますが、日暮里・舎人ライナーが利用できます。これは2008年に開業した荒川区の日暮里と足立区の舎人エリアを結ぶ新交通システム。駅でいうと日暮里駅、西日暮里駅を経て尾久橋通りを走って見沼代親水公園までの9.7キロメートルを結んでいます。

日暮里・舎人ライナー沿いには公園、せせらぎのある緑道などもあり、桜や自然に親しめます(筆者撮影)

住宅地の中の路線で、沿線には舎人公園や前述の見沼代親水公園、西新井大師などの遊び場、行楽地などもあります。

駅と道を挟んだ場所で再開発計画が進行

その西日暮里駅のすぐ近くで再開発の計画があります。2006年度に西日暮里五丁目まちづくり協議会が設立されて以来、2014年度には西日暮里駅前地区市街地再開発準備組合が設立され、2021年度には都市計画決定、告示が行われています。

開発予定地。道路上から駅前まで赤い線が伸びていますが、これは駅と再開発エリアを繋ぐデッキが計画されているためです(出典:西日暮里駅前の再開発に向けた活動について)

開発予定地はJR線と日暮里・舎人ライナーがその上を走る尾久橋通り、JR線と直行する道灌山通りに囲まれた約2.3ヘクタールの場所。駅からは道灌山通りを挟んだ向かいです。

駅前にふさわしい都市機能を導入

JR西日暮里駅を日暮里・舎人ライナーのある東側から見たところ。写真中央の手前から奥にかけて走るのが道灌山通りで、それと交差しているのが尾久橋通り。その上を日暮里・舎人ライナーが走っており、写真奥の三番目の高架がJR。道灌山通りの左側に駅がありますが、出てすぐ通りなので駅前という場所がありません。再開発エリアは尾久橋通りを渡った右手になります(筆者撮影)

実際に行ってみると分かりますが、西日暮里駅は駅の正面には道灌山通りが走り、JR線に沿って東側の通りや道灌山通り沿いには細長く店が並んでいるものの、駅前にはまとまった土地がありません。日暮里・舎人ライナーへの乗り換えも不便です。

そこで再開発では駅前にふさわしい多様な都市機能を導入、オープンスペースを整備するなどの計画があります。

再開発エリア内の機能について説明した図(出典:西日暮里駅前地区第一種市街地再開発事業)

再開発準備組合のホームページを見ると、敷地内の駅、道灌山通りに面した場所には交通広場を設け、その背後にはオープンスペースがあって建物となっており、駅前に広い空間ができることになりそうです。現在はタクシー乗り場も駅の高架下にありますが、もう少し分かりやすい場所に設置されることになるのでしょう。

文化交流施設、商業施設も建設予定

建物には区内外から人が集う文化交流施設も入ることになっており、現状の概要では主要用途の中に劇場という言葉が入れられています。どのようなものにせよ、これまでの西日暮里駅周辺にはなかったものが作られることになるはずです。

完成予想図。建物の高さは約170メートルになる予定です(出典:西日暮里駅前地区第一種市街地再開発事業)

完成予想図で見ると文化交流施設、商業施設の入る比較的低層の建物背後には高層の都市型住宅、業務施設が入り、その建物の足元にもオープンスペースが設けられることになっています。広場のない場所に配慮したのでしょう、全面、建物足元と複数のオープンスペースが作られます。

工事が始まるのは2025年度末くらいから

今後の計画としては2024年度の夏頃には再開発組合設立および事業計画の認可が行われ、権利変換計画の認可、解体工事・建築工事が始まるのは2025年度末頃、すべてが完成して工事完了公告が出されるのは2030年度末頃となっています。

建物完成までまだかなり時間があるため、建物、住宅の詳細などはまったく分かっていませんが、複数路線が利用できる西日暮里駅のすぐ目の前であることを考えると人気を集めそうです。平面図で見ると駅と道路をまたいで直通の通路が作られる計画で、交通利便性の高い住宅になるでしょう。

知られざる西日暮里駅の魅力とは

さて、その西日暮里駅ですが、乗り換えでは利用したことがあっても降りたことはない、周囲を歩いたことはないという人が多いのではないでしょうか。どんな街なのか、以下に、ご紹介していきましょう。

にぎやかな東側には飲食店などが集積

JRの駅から東側、線路に沿うように伸びる飲食店街。右手に行くと日暮里駅に行きつきます(筆者撮影)

面白いのは駅の東西で街の表情がまったく異なるという点です。まず、再開発エリアである東側はJR線の線路沿いや道灌山通り沿いに主に飲食店などが並んでおり、にぎやかな雰囲気があります。都心部に比べると価格も手頃な印象です。

駅周辺は小規模な建物が多く、大型店はほとんど見かけません。スーパーも同様で小型店が中心です(筆者撮影)

飲食店だけでなく、高架下にはスーパー、駅近くには郵便局などもあり、日常に必要な買い物、用事は駅周辺で済みそうです。

西側の高台には私立男子校や新築マンション

駅のホームから見た西側。高台の中央に道灌山通りが走っています。左右どちらに行くにも坂があります(筆者撮影)

一方の西側はJR線の駅ホームから見ても分かる通り、高台になっています。駅と直行する道灌山通りは高台の間を走っているのです。

駅から見て右手の高台には40年以上連続で最多の東京大学合格者数を誇る私立男子中高一貫校、開成中学校、開成高等学校があります。

道灌山通り沿いには飲食店、ドラッグストアなどの店舗も並んでいますが、近年はマンション建設が進んでいます。取材に訪れた時には通り沿いで新築されたばかりのマンションの契約者内覧会が開かれていました。

道灌山通りが不忍通りにぶつかる少し手前あたり。いくぶん雑然とした東側に比べると整然とした印象があります(筆者撮影)

道灌山通りの駅から西側は区境が入り組んでおり、駅周辺は荒川区ですが、少し行くと台東区が入り込んでおり、その先は文京区となっています。

実は観光スポット、谷根千が徒歩圏

よみせ通り。写真中央に見えているのが谷中ぎんざ通り入り口のゲートです(筆者撮影)

道灌山通りを文京区に向かって歩くと左手によみせ通りが交差しています。よみせ通りは谷中の有名観光スポット夕やけだんだんを下り、谷中ぎんざ商店街を抜けたところにあります。やはり有名店の並ぶ、観光客にも人気の店が並ぶ通りです。

昔ながらの風情が残る谷根千エリア。西日暮里からなら十分徒歩圏で、ご近所と言ってよい距離にあります(筆者撮影)

実は西日暮里駅の西側、日暮里駅寄りは谷根千エリアとは目と鼻の先。西日暮里駅からでも歩いて行ける距離にあり、この街に住むと谷根千はお散歩エリア。人気のカフェやかき氷店を日常使いできるわけで、花見や散策の行き先には事欠きません。

谷中ぎんざ商店街。以前に比べると観光客目当ての店が増えているのは確かですが、中には古くからある肉屋、八百屋、魚屋なども残されています(筆者撮影)

谷根千エリアには意外にスーパーやドラッグストア、老舗の酒屋、魚屋などもあるので、週末には散歩がてら買い物もできます。

眺望自慢の高台には寺社が並ぶ

地元で親しまれる諏方神社。高台にあり、境内からは駅東側エリアを見降ろせます(筆者撮影)

JR線沿い、西側の高台には寺社が並んでおり、中でも諏方神社は地元ではおすわさまと呼ばれて親しまれています。節分、どんど焼きその他季節の行事も多く、8月の例大祭では多くの露店も並びます。都心近くの交通利便性の良い街でありながら、身近にこうした歴史、季節を感じるスポットがあるのは生活に潤いを与えてくれそうです。

富士見坂入り口。由来を書いた掲示板が建てられています。高い建物があるのは不忍通りあたりです(筆者撮影)

この高台は眺望が良いことでも知られており、富士見坂は特に有名。現在は建物が建て込んでしまいましたが、もともとは富士山が見えたことから名づけられています。

日暮里駅を利用すれば成田空港も近い

日暮里駅と駅前の再開発エリア。駅前は再開発で変貌しましたが、日暮里駅周辺には銭湯が残るなど古くからの雰囲気も残されています(筆者撮影)

隣駅の日暮里駅が約500メートルという距離にあり、徒歩圏というのも交通、生活の面からは便利なところ。日暮里駅では西日暮里駅で利用できる山手線、京浜東北線・根岸線、日暮里・舎人ライナーに加えて、常磐線快速(上野東京ライン)、京成本線が利用できます。

西日暮里駅で利用できない他路線のうち、特に便利なのが京成本線を利用できる点。京成本線の本来のターミナル駅はお隣の京成上野駅ですが、成田空港へ向かうスカイライナーなどを利用する人の多くは日暮里駅を利用しています。海外に出張、観光などでよく出かけるという人にとっては、歩いて行ける範囲で成田直通路線を利用できるのは便利です。

駅前の商業施設も古くからある街だけに西日暮里駅より充実しており、駅ナカ施設もあれば、駅前の再開発エリア、昔からの日暮里繊維街などとさまざまな施設が集積。日常の買い物から趣味の手工芸材料を買うなどのためにも役立ちます。

あまり知られていない西日暮里駅ですが、周辺には魅力的な場所があり、そのいずれにも徒歩でアプローチできる西日暮里は穴場的な存在といえます。行ったことのない方はぜひ訪れてみて、知られざる面白さを実感できたら、住宅購入の場としてどうかを考えてみてはいかがでしょう。

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