重工大手IHIのエンジン製造子会社「IHI原動機」で燃費に関する測定データの改ざんが発覚した問題で、国土交通省は25日朝、不正があった新潟市と群馬県太田市の2工場への立ち入り検査を始めた。事実関係を詳しく調べ、行政処分の可能性を含め検討する。

 同日午前9時半過ぎ、新潟市東区のIHI原動機新潟内燃機工場に、スーツ姿の国土交通省の職員5人が入った。工場は新潟市中心部から5キロほど離れた幹線道路沿いにあり、大型トラックが頻繁に出入りする門の前には、早朝から多くの報道陣が詰めかけた。

 検査の内容などを聞かれた国交省の職員は「取材には応じられない」と話し、工場の担当者に案内されて「IHI原動機」と書かれた建屋に入っていった。

 IHI原動機では、2003年以降に出荷された国内外向けの船舶用と陸上用のエンジン計5537台のうち4361台で、出荷前の試運転で測る燃費データを実際の測定値より良く見せるなどしていたことが判明した。

 船舶安全法に基づくため、船舶エンジンについてのみ調べる。IHI原動機では、一部の製品で海洋汚染防止法と国際海事機関が定める窒素酸化物の排ガス規制に違反するおそれがある事例が確認された。国交省は規制を守っていると確認できるまで、ディーゼルエンジンに対して航行に必要な証書を交付しないと同社に伝えている。

 社内調査の中で、不正は1980年代後半から続いていたとの証言もあったという。IHIは外部の有識者らによる特別調査委員会を設ける。国交省は不正の全容解明と再発防止に向けて5月末までにIHIに報告を求めている。(初見翔、高橋豪)