上水道の供給がない長崎県五島市戸岐町の半泊(はんとまり)地区に、新たな小型浄水装置が導入された。途上国を中心に装置の納入実績があるヤマハ発動機が提供。実証実験で飲み水の安全性が確認され、地区で宿泊施設を運営する会社「MONTE(モンテ) CASA(カーザ)」が運用することになった。

 同地区は山あいの集落に数世帯が暮らし、宿泊施設や蒸留所などもある。水源から引いた水を共同で簡易処理して使っているが、設備の老朽化や水の安定供給が課題だった。

 地区の課題を知ったヤマハ発動機は2022年から集落に小型浄水装置「ヤマハクリーンウォーターシステム」を設置し、実証実験をしてきた。わき水を砂利や砂などで濾過(ろか)し、微生物の働きで浄化する装置だ。

 わき水の風味を損なわないよう、塩素の代わりに紫外線で除菌。送水のポンプの電源は太陽光発電などの自然エネルギーを使う。処理した水は保健所の水質検査で安全性が確認された。

 4月19日にあった装置のお披露目会には住民や市職員らが出席。同社の今井久美子・海外市場開拓事業部長が「国内でも安心な水を安定してお届けするには、まだ課題がある。私どもが提供する水を長く飲んでいただきたい」とあいさつした。地区の住民で水の供給を受ける半泊シズエさんは「雨が降っても濁らなくなる。ますますおいしい水になってありがたい」と話していた。(エリアリポーター・梶山王)