子どもは「夜9時までに寝るべき」「午後10時から午前2時までのゴールデンタイムに睡眠をとらないと成長ホルモンが出ない」といった話、耳にすることがありますよね。とはいえ、子どもを早く寝かせたいと思っても全然寝てくれず、ついこちらがイライラ……なんてことは我が家でもよくあります。

“睡眠のゴールデンタイム”については、入眠時に成長ホルモン濃度が上昇するけど何時に寝ないと分泌されないということはなく、まとまった睡眠をとっても、分割してとっても、1日に分泌される成長ホルモンの量は一定だと多くの研究者が言っています。とはいえ、早く寝かせるにこしたことはないということで、今回は子どもの理想の睡眠時間や睡眠不足によるデメリット、我が家が早寝をさせるべく実践している方法を紹介します。

年齢別の適正な睡眠時間は?

子どもはどのくらい睡眠時間をとればよいのでしょうか。米国の国立睡眠財団が推奨する子どもの年齢別必要睡眠時間は下記のようになっています。

  • 0か月〜3か月:14〜17時間
  • 4か月〜11か月:12〜15時間
  • 1〜2歳:11〜14時間
  • 3〜5歳:10〜13時間
  • 6〜13歳:9〜11時間
  • 14〜17歳:8〜10時間

参考:How Much Sleep Do You Really Need?  / National Sleep Foundation

日本の子どもは世界に比べて夜更かしで睡眠不足!?

世界17の国(地域)で、0〜3歳児の子どもの就寝時間と総睡眠時間を調べたデータがあります。このデータによると、欧米地域に比べてアジア地域では子どもの就寝時刻が遅い傾向にあることがわかります。就寝時刻が遅いのは香港、台湾、韓国、インドの夜10時以降で、日本の平均就寝時刻は午後9時17分でした。

一方、起床時刻になると日本は他国と比較して早く、結果、総睡眠時間が他の17地域の中で一番短い11時間37分となっています。

先述した子どもの推奨睡眠時間に照らし合わせると、日本の子どもは睡眠時間が少なく、睡眠不足気味であることがわかります。

参考:https://kodomo-manabi-labo.net/yokokomada-interview-01

睡眠不足だと何が問題なのか

「居眠り」「抑うつ」「イライラ」「不安」などは、大人も経験から想像できると思いますが、それだけではない幼少期の睡眠不足の問題について、研究結果を2つご紹介します。

脳の発育に影響がある!?

睡眠不足の影響について、学力が低下するということがよく言われています。 眠くて授業に集中できない、記憶力が低下する、というのはもちろんですが、それだけではなく、「脳の発育」に影響があるという研究があります。

現・国立青少年教育振興機構の理事長鈴木みゆき氏の、2002年の研究によると、睡眠時間が不規則な子どもは、規則的な子供に比べて、5歳児の発育の目安とされている「三角形模写」ができない割合が多いことが、統計学的にわかったそうです。これは認知能力に関係しているそうで、5歳の段階で脳の発育に差が出てしまう可能性があるようです。

参考:子どもの早起きをすすめる会「三角形を描けない子ども達」(聖徳大学短期大学部保育科 鈴木みゆき)(PDF)

成長してから太りやすい!?

睡眠不足の影響として、「太りやすい」という調査結果もあります。 富山大学の研究で3歳時の睡眠時間と中学1年時の肥満の関係を調べた結果、3歳時点の睡眠時間が短いほど、中学1年時での肥満率が高かったそうです。

参考:富山大学大学院 富山スタディ「小児期からの生活習慣病予防」

参考:子どもを早く寝かせたい! 早寝をさせる7つのコツ/ウチコト

 

9時までに寝かせないとキレる子になる!?

「9時までに寝かせないと、キレやすい子になってしまう」という話、聞いたことありませんか? しかし、子どもを迎えに行き、帰宅して、食事して、お風呂に入れて、歯を磨いて……とやっていると、どんなに急いでも就寝時間が遅くなってしまいます。

しかしこれは、それほど心配はいらないと小児科の先生は話しています。

確かに睡眠不足が続けば、健康にとってよくありません。十分に眠れないと疲れますし、注意力や記憶力の低下、気分障害、イライラ感などで本人がつらい思いをし、周囲が困るような問題行動の原因にもなり得ます。それでも、「◯時までに寝かせないと体が弱くなる」「キレる子になる」「背が伸びない」といった説には医学的根拠がありません。

引用:9時までに寝かせられません【コドモカルテ/小児科専門医 森戸やすみさん】

9時までに寝かせないとキレる子になるというのは、どうやら根拠の無いお話のようでまずは一安心ですね。

睡眠時間10時間を目指すべく我が家が実践している方法

小学生の登校時間に合わせて朝7時に起きることを想定したら、10時間睡眠のためには、夜9時には寝たいところです。ただ夕飯、お風呂、歯磨き……夜9時なんてあっという間ですよね。そんななか、いくつか効果があった方法を挙げます。

夕飯より先にお風呂が効果的!

ただ順番を入れ替えるだけなのですが、いちばん効果がありました! 眠るときには深部体温が下がります。子どもって眠くなると手や足がやたらあたたかくなりますよね。それは体には手や足から体温を放出して、体温を下げる仕組みが備わっているからです。お風呂につかってベッドに直行では、深部体温が上がっているため眠りに入りにくいのです。お風呂のあとに夕飯というスケジュールだと、徐々に体温が下がっていくので、眠りを誘いやすいようです。

就寝1時間前はゲームやYouTubeを見ない

目から入る刺激は、睡眠・覚醒のリズムに大きな影響があることがわかっています。デジタルデバイスの発する明るい光(ブルーライト)を見ると、昼が続いていると体が勘違いし、新しい情報や刺激的な情報に脳が興奮状態になり、寝つきが悪くなります。また、眠気を促すホルモンであるメラトニンの分泌を抑制する可能性もあるとか。我が家では就寝前のゲームやYouTubeはNGとルール化しました。

ベッドでの絵本の読み聞かせ

毎晩1冊だけと決めて絵本の読み聞かせをしています。間接照明(無印良品の持ち運びできるあかり)のみで、だんだんと声のトーンを落とすなどの工夫も。子どもだけでなく大人も気持ちが落ち着きリラックスする効果があるようで、一緒に寝落ちすることもしばしば(笑)。 

「早寝・早起き」ではなく「早起き・早寝」

体内時計を修正するカギは朝の光。早寝よりもまずは1週間がんばって早起きをさせて、ベランダに出て太陽の光を浴びます。1〜2週間ほど続けると子どもたちの体内時計は徐々に朝型に変わり、早起きの辛さは減ってくるようです。早起きした分、夜は早く眠くなります。ただ、週末に寝坊してしまうと、体内時計がまた狂ってしまうので注意が必要です。

まとめ

投打の二刀流で活躍するメジャーリーガーの大谷翔平さんは、子ども時代も今も1日10時間を超える時間を睡眠に費やしているそうです。

必ずしも「夜9時までに寝るべき」ではないにしろ、子ども睡眠は脳の発育にも影響があるのなら、理想の10時間睡眠を目指したいですよね。早く寝てくれれば、親の自由時間も増えて、子どもは元気に過ごせてWin-Winですし。

とはいえ、いろいろなことをしても、寝ないときは寝ません(笑)。ひととおりやってみてダメなら、部屋を暗くして「おやすみ〜」と言って寝室から去ってみると意外と即寝しているということも。これもぜひ試してみてください。

文/Ai Kano