台風一過で迎えた2023年スーパーGT第3戦、6月3日土曜日のGT500クラス公式予選はQ1で2番手タイムの佐々木大樹、そしてQ2を担当し待機の末の“1アタック”に賭けた平手晃平の24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zが今季初ポールポジションを獲得。3番手となった19号車WedsSport ADVAN GR Supraとのヨコハマタイヤ対決も制し、近年はここ鈴鹿を得意としてきたニッサン陣営内“最後の1台”が、明日の450km決勝に向け視界良好の最前列グリッドを得た。

 前日に列島を襲った台風2号とそれに伴う梅雨前線の影響で、金曜搬入日は近畿東海のみならず、全国的な豪雨被害に見舞われた。ここ三重県でも南部を中心に線状降水帯が発生したが、予選日の三重県鈴鹿市近辺は夜半までに雨が上がる状況に。早朝のサポートレースこそ路面に残るウエットパッチの影響で赤旗が続出したものの、5分遅れで開始されたGTの公式練習は、ほぼドライ路面のコンディションとなった。

 それでも各地に残された爪痕は大きく、予選日午前の段階で関東や関西方面の大動脈たる新幹線は一部運休、静岡県内を中心とした高速道路は通行止めの区間が残るなど、現地観戦予定だったファンにも到着が困難な状況が予想されるなか、週末最初のセッションが進められた。

 そんな状況下で速さを見せたのは、最後の占有走行でベストを更新した24号車リアライズコーポレーション ADVAN Z。前戦富士では表彰台目前のところでまさかのアクシデントに見舞われており、その鬱憤を晴らすかのようなスピードを披露する。

 一方、その富士で完勝を飾った36号車au TOM'S GR Supraも、戦果であるサクセスウエイト(SW)を40kg搭載する状況ながら2番手に続くなど、ロングランを中心に進めながらクルマの仕上がりの良さを感じさせる。

 同じく占有走行の終盤に3番手へ飛び込んだ8号車ARTA MUGEN NSX-GTを筆頭とするホンダ陣営や、同4番手の39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supra、そしてディフェンディングチャンピオンながら苦しい2戦を過ごした1号車MARELLI IMPUL Zなど、相対的にウエイトの軽い陣営が、午後の予選で前方グリッドを占めることが予想された。

<Q1>3メーカーが拮抗。ラストアタックでQ2進出ラインが緊迫
 まだ強い風が吹き付けるなか、次第に数が増えていくファンで賑わいを取り戻した午後のピットウォークを経て、ふたたびサポートレースの大幅ディレイによりGT300クラスのQ1A組は午後の15時25分からと、予選自体が約20分遅れで開始される。

 この時点でサーキットは気温は25度とほぼ横ばいながら、路面温度は40度と午前より大幅に上昇するコンディションとなり、そこから約30分後の15時58分にようやくGT500のコースオープンを迎える。

 まずは38号車ZENT CERUMO GR Supraの立川祐路を先頭に各車がピットを後にすると、セッション3分経過時点で14号車ENEOS X PRIME GR Supraと24号車リアライズが、4分経過で23号車MOTUL AUTECH Zと19号車WedsSport ADVAN GR Supraが、そして5分経過の大トリで3号車Niterra MOTUL Zと、各タイヤ銘柄とチームごとの戦略が入り乱れ、チェッカーまでアタックタイミングが交錯する勝負を予感させる。

 すると計測4周目の64号車Modulo NSX-GT、伊沢拓也がまずは1分45秒441のターゲットタイムを記録。ここで同一周回数のアタック組からはこのタイムを更新するクルマは現れなかったものの、周回数の異なる組から24号車リアライズの佐々木が計測3周目に驚異的タイム刻み、1分44秒443で首位に立つ。

 残り時間がみるみる減っていき、計測5周目の39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraが1分44秒台に入り、ここで2番手へ。このタイムが計時された直後にチェッカーが振られると、各車がラストアタックに賭けるなかランキング首位でSW50kgを搭載する23号車ロニー・クインタレッリが1分45秒347として3番手に飛び込んでくる。

 しかし後続も続々とベストを更新する勢いをみせ、17号車Astemo NSX-GTが1分44秒663で2番手に浮上したのを皮切りに、16号車ARTA MUGEN NSX-GT、36号車au TOM'S、そして1号車MARELLIや100号車STANLEY NSX-GTらが続々とカットライン8番手圏内のタイムを刻んでいく。

 しかし、その直前。ピット待機組で自身計測3周目だった19号車WedsSport ADVANの阪口晴南が1分44秒366を記録してあっさりと首位を奪取。この時点で23号車は惜しくもQ2進出ならず。ニッサン陣営の24号車とともにヨコハマタイヤ装着車が1-2を堅め、19号車は昨季最多ポールポジションの貫禄を見せつけるトップ通過を決めてみせた。

<Q2>重いクルマと3メーカー、そしてタイヤメーカーが入り乱れる展開に
 GT300のQ2を経て16時36分開始のQ2は、セッション開始とともに100号車STANLEY山本尚貴を先頭にブリヂストンタイヤ装着車が間隔を空けつつトラックへ。一方で19号車WedsSportの国本雄資、24号車リアライズの平手ともに残り5分でようやくピットボックスを後にし、残り半分の時間でポール獲得に挑む。

 ここで先行組でもグリップ発動の周回数が分かれ、まずはNSX-GT勢に先行して39号車DENSO KOBELCO SARDの中山雄一が計測4周目に1分44秒924のターゲットを記録する。

 ここから最後のチェッカーラップに向け、選択したタイヤと周囲の状況を整えた各車は、隊列の先頭でコースインしていた100号車STANLEY山本が続く計測5周目で1分44秒763として最速を更新。さらにSW40kgをものともせず、36号車auの坪井翔も1分44秒585とし、前戦ウイナーが午前からの好調を引き継ぎ予想外のポジションを奪っていく。

 残すは待機組となるヨコハマ装着組だが、こちらの2台は明暗が分かれ、19号車国本は1分44秒679と対36号車にわずかに届かず。一方の24号車平手はセクター3で38秒977、最終セクター4で19秒576と、いずれもベストを更新する渾身のアタックでホームストレートに戻り、1分44秒320のトップタイムを叩き出す。

 昨季まではミシュラン装着の3号車や23号車、そしてブリヂストンの王者1号車と、ニッサン陣営が得意とするトラックでもあっただけに“今回こそ、鈴鹿を制するのは自分たちの番”とばかりに、平手が2016年最終戦もてぎ以来となる、GT500での2度目のポールポジションを獲得。KONDO RACINGとしてGT500で3度目のポールとなり、公式映像の予選後インタビューでは佐々木、平手ともに感極まり、男泣きするシーンも見られた。

 トップの24号車、フロントロウ2番手となった36号車の背後には、19号車WedsSport、100号車STANLEYが並び、今回もニッサン、トヨタ、ホンダの3メーカーが2列目セカンドロウを分ける結果となっている。

※追記:予選後の車検で24号車リアライズコーポレーションADVAN Z は不合格となり、順位は15番手の最下位に。ポールポジションは36号車au TOM'S GR Supra、坪井翔がGT500で初めてポールを獲得することになった。