3月29〜30日に、東京都江東区有明の東京ビッグサイト周辺で開催されるABB FIAフォーミュラE世界選手権第5戦東京E-Prixを前に、ニッサン・フォーミュラEチームのドライバーであるオリバー・ローランドとサッシャ・フェネストラズが銀座の老舗寿司店で本格的な握り寿司に挑戦した。

 今年でシリーズ開始から10年目を迎えるフォーミュラEで、今回は初めての日本開催ということもあり、大会前からプロモーションイベントやメディアセッション等で盛り上がりをみせている。そんななか、チームのホームレースを迎えるふたりが向かったのは、銀座にある昭和10年開業の『ぎんざ 寿し幸』。今回は特別にお寿司の握り体験をさせてもらうという。

 お店を訪れたふたりは、割烹着姿になりカウンターの内側へ。通常なら握りのみを体験するはずなのだが、今回はワサビをおろすところからスタートした。お店の4代目大将である岡田茂さんのすすめもあって味見をしてみるも、ふたりは予想以上に効いた様子。ローランドは思わず涙を流していた。

 さらに、大きなマグロのブロックを切って“柵”を取るという、普段は絶対に体験することができないことにも挑戦。その後も大将からの説明を真剣に聞きながら、シャリの握り方やネタとの合わせ方、所作のひとつひとつを学んでいた。

 普段から寿司を食べるのが大好きだというフェネストラズも、自分で握るとなると話は別のようで、シャリづくりに苦戦している様子だ。一方のローランドは、以前に握りの体験をしたことがあるそうで、スムーズな手捌きを披露。これには大将も思わず「上手ですね!」と感心していた。

 その後ふたりは、見よう見まねで大トロとシマアジを握ると、最後には軍艦にも挑戦。「ウニとイクラのどちらがお好きですか?」と大将に聞かれると、フェネストラズが「ウニ!」と即答。ただ、ローランドはあまり得意ではないようで、顔をしかめて返事をする。

 こうして和やかな雰囲気で握り寿司体験をしたふたり。最後は自分たちで握った寿司に舌鼓を打っていた。

「アメージングな経験になった。僕はいつも食べる方で寿司を楽しんでいるけど、握るのがこんなにも難しいとは思わなかった。改めて、寿司職人のみなさんを尊敬したいし、教えてくれた大将には感謝している」とフェネストラズ。ちなみに好きな寿司ネタは「大トロが一番美味しい!」と流暢な日本語も回答してくれた。そのほかにもウニやアナゴ、ウナギが好物だという。

 フェネストラズは、スーパーGTや全日本スーパーフォーミュラ選手権など日本のレースに4シーズン参戦していた経験を持っている。時には流暢な日本語で大将と会話したり、寿司ネタや包丁などいろいろなものに興味を持って質問したりするシーンも見られた。今回も数日前に来日して、以前在籍したTOM’Sの舘信秀会長らと食事に出かけるなど、日本を満喫中だという。

「一昨日は寿司を食べに行って、昨日はてんぷらだった。日本が大好きだし、またここに来てレースができるのがすごく嬉しい。僕が日本でレースをしていたカテゴリーとフォーミュラEはタイプが違うけど、今週末のレースが楽しみで仕方がない」

 ローランドも本格的な握り寿司体験が楽しかった様子で「すごく良い経験になった。以前、家で体験した時はうまくいかなかったけど、今回は本当に楽しかった。こういった素晴らしい機会をくれたお店の皆さんに心から感謝している」と笑顔をみせた。普段はマグロが好きだというが、今回握ったシマアジも美味しかったとのことだ。

「僕たちにとってはホームレースだけど、ライバルたちも手強いからプレッシャーもある。土曜日に多くのファンの前で走れるのは楽しみだし、自信を持ってレースに臨みたい」と、初の東京E-Prixに向けた意気込みを語った。

 大将の岡田さんも「ふたりとも喜んでいただけたのであれば良かったです。技術的なものは、一度やっただけでできるものではないですけど、ひとつの体験として楽しんでいただけたのであれば何よりです」と笑顔で語っていた。

 短時間ではあったが、貴重な体験ができたということで、終始笑顔だったローランドとフェネストラズ。特にローランドは比較的に上手に握れていたこともあり、「もし将来僕たちがフリーだったら雇ってもらってもいいですか?」と申し出てみるも、「修行は厳しいよ」と大将から言われ、苦笑いをみせるという一幕もあった。

 ニッサン・フォーミュラEチームのドライバーとして、初のホームレースを迎えるふたり。東京の町を舞台に、フェネストラズとローランドはどんな戦いを披露してくれるだろうか。最初の走行は、3月29日(金)16時25分から始まるフリープラクティス1となる。