2023年に初開催されたF1ラスベガスGPは、フェラーリがFP1の早い段階でコースの不具合による損傷からシャシーを1台失うという大きな物議を醸したアクシデントによって幕を開けたが、当のラスベガスの街とその観光産業には大きな利益をもたらしたようだ。

 これはクラーク郡当局は今週初めに発表した報告書のなかで明らかになった。地元自治体と契約したいくつかの機関によって作成された報告書は110ページを超え、グランプリがギャンブルの中心地に与えたあらゆる利益とコストの調査を行っている。

 報告書によると、州税と地方税だけで得られた収入は7700万ドル(約116億円)を超え、すでにこれだけでも莫大な金額となっているが、グランプリをこの有名な街で開催したことによる経済的利益については8億8400万ドル(約1341億円)という驚異的な金額が見積もられている。これは、カナダ、メキシコ、オーストラリアGPなど非常に人気のある会場を含む他のグランプリが、開催都市に通常もたらしている利益の2倍に相当する。

 この数字は、リバティ・メディアが将来グランプリを開催するよう他のアメリカの都市を説得し、ラスベガスで初めてスポーツを運営した彼らにふたたびレースのプロモーターとして費用を負担するように求めるための材料となるだろう。

 10億ドル(約1517億円)近い経済効果があることを考えると、ニューヨーク市と州当局がリバティ・メディアからのプレッシャーに抵抗するのは難しいだろう。リバティ・メディアは、アメリカでの4つめのグランプリレース開催に向け、挑戦をしているところだ。しかしクラーク郡の報告書には、何週間も市民の生活を混乱させるという別の見地も含まれており、地元の政治家はその観点から尻込みするかもしれない。

 ラスベガスGPの報告によると、2万5000人以上の人々が仕事への行き帰りに大規模な混乱に見舞われ、一部の人々は余計にもたらされた交通渋滞により1日あたり最大1時間を失ったという。この問題は一部の人々にとって9カ月間続いた。グランプリのサーキットを準備するために必要な建設作業の開始から、イベントの翌月にすべてが解体されるまでにそれだけの時間がかかったということだ。

 それが、このグランプリが地元の人々には不人気だった主な理由だ。コースが設営された街のエリアにある中小企業は、その9カ月間に大きな迷惑を被った。一部のカジノでさえ、グランプリのせいでアクセスが悪くなったことから、収入の損失があったことを報告している。

 いずれにせよ、グランプリ開催による経済効果に主眼を置くのであれば、それがどこであろうとF1からの提案を受け入れるのは当然のことだ。ラスベガスからのこの報告書は、年間30レースを開催するところまでカレンダーを拡大しようと追求しているステファノ・ドメニカリCEOを助けることになるだろう。