4月29日、2024MotoGP第4戦スペインGPが開催されたヘレス・サーキット-アンヘル・ニエトにて、MotoGPクラスの公式テストが行われ、ファビオ・ディ・ジャンアントニオ(プルタミナ・エンデューロVR46・MotoGPチーム)がトップタイムをマークした記録した。

 4月26〜27日に開催されていた第4戦スペインGPは大盛況のなか幕を閉じた。そして一夜明けた月曜日には、現地時間10時から18時までの長丁場によってテストが実施。レギュラー参戦ライダーの22名とテストライダーのロレンツォ・サバドーリ(アプリリア・レーシング)、ポル・エスパルガロ(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)が加わり、計24名のライダーが参加した。

 決勝レースが行われた日曜日同様、朝から青空が広がる絶好のドライコンディションでテストがスタート。開始5分でマーベリック・ビニャーレス(アプリリア・レーシング)、ヨハン・ザルコ(ホンダ・カストロールLCR)のふたりが先陣をきって走行を開始させると、各車も少し時間を置いて続々とコースインしていく。

 開始から中盤あたりまではマルク・マルケス(グレシーニ・レーシングMotoGP)、フランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)、ディ・ジャンアントニオのドゥカティ勢がトップにつける状況が続いた。本戦でも好調なドゥカティ勢は、どのチームにもマシンの見た目上には見新しいパーツなどはあまりなかったように見受けられた。各チーム、新しいジオメトリーやセットアップを中心にテストを進めていたようだ。

 3時間経過あたりから、昼休憩のタイミングでコース上を走らせるマシンは少なくなっていたが、その約1時間後にはドゥカティ勢、そしてヤマハとホンダの日本メーカーが走行を再開。しかし、タイムを更新するライダーは少なく、残り2時間を切っても順位に変動はなかった。

 トップにディ・ジャンアントニオ、2番手にフランコ・モルビデリ(プリマ・プラマック・レーシング)、3番手にバニャイアが続いたままラスト1時間を迎える。セッション終了間際には、タイム更新をするライダーがわずかに現れた。

 ビンダーが5番手に浮上すると、その後ビニャーレスも2番手に食い込むタイムをマークしたところで、8時間に渡って行われたセッションが終了。ディ・ジャンアントニオが1分36秒405でトップ、2番手には0.087秒差のビニャーレス、3番手には0.122秒差のモルビデリがトップ3という結果で終えている。

 4番手はバニャイアと、上位10台中7台はドゥカティが占める結果となった。序盤にトップにつけ、新しいリヤのサムブレーキをテストしていたというマルク・マルケスは5番手に続いた。

 なかでも、怪我の影響で事前のセパン、カタール公式テストに参加できいなかったモルビデリは、ドゥカティ勢のなかでも一番多い計82周を走行。チームメイトのホルヘ・マルティン(プリマ・プラマック・レーシング)は、終盤に転倒もあったようで、総合10番手で終えている。

 2番手にビニャーレス、7番手にアレイシ・エスパルガロと2台がトップ10に入ったアプリリア勢。アプリリア・レーシングの2名は、週末のスペインGPでサバドーリが試していた新しいライドハイトデバイスをテストしていたようだ。さらにビニャーレスはリヤテールユニット、アレイシ・エスパルガロはディフューザーとそれぞれも新しいパーツも試していたとのこと。テストライダーのサバドーリは新しいシャシーと、2025年仕様のエンジンが搭載されたRS-GPをテストしていたという。

 また、ラウル・フェルナンデス(トラックハウス・レーシング)の元にはアメリカ国旗カラーのものと、アプリリア・レーシングカラーの黒を基調とした2台のマシンが用意されていた。第7戦イタリアGPから使用する予定だという、RS-GP24と実戦で使用しているRS-GP23の2台をライドしていた。

 KTMでは、ビンダーが唯一トップ10の6番手に入った。テストライダーはダニ・ペドロサではなくポル・エスパルガロが参加しており、サイドフェアリングがアップデートされたものをテストしていた。他にも、レースウイーク中にペドロサが試していたパーツをいくつかテストしていたと思われる。また、ペドロ・アコスタ(レッドブルGASGASテック3)も、新しいフェアリングや空力パーツを試していたことも確認されている。

 日本メーカーの最上位は、総合14番手のアレックス・リンス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGPチーム)だった。ヤマハは今回のテストで実戦で使用しているものと、黒いカウルのヤマハYZR-M1の2台を走らせており、一際注目を集めていた。

 空力デバイスを一新し、大幅にアップデートが施されていた。アンダーカウルは3つのフィンで設計され、ドゥカティやKTMが使用しているものと似たような構造のパッケージを使用。さらにシャシーやサイドフェアリングの新エアロなど、数々のアップデートが加えられたものを投入していた。リンスは計73周、ファビオ・クアルタラロは計84周を走行した。

 ホンダ勢の最上位は16番手の中上貴晶(ホンダ・イデミツLCR)、そして最多周回数88周をこなしたのはヨハン・ザルコ(ホンダ・カストロールLCR)だった。このふたりは、午前から各々トリコロールカラーのホンダRC213Vを走らせる姿もあった。スペインGPでワイルドカード参戦したステファン・ブラドル(HRCテスト・チーム)が走らせていたもので、新しくアップデートが加えられているという。

 リヤグリップの不足に悩まされているホンダ勢だが、今回はそれを改善するためか、新しいリヤウイングをテスト。実戦のものより、少しサイズ感がアップしたようなものを試していた。また、スペインGPを前にバルセロナ・カタロニア・サーキットでテストを行っていたレプソル・ホンダ・チームは、その際にアップデートされたホンダRC213Vを走らせていたようだ。

 マリーニのマシンには新しいシャシーをテストし、ミルのマシンにはプレシーズンテストで使用していた低めのリヤウイングが再登場。標準スペックのものと異なるコンセプトのものの比較テストをしていたとのことだ。

 今回のテストでも様々新しいパーツが続々登場するなか、ライダー達はさらなるマシン向上のために各テストメニューをこなしていたようだ。ウイーク中に迫るタイムをマークするライダーはいなかったものの、1秒以内に17台と非常にタイムが接近しており、今後も各チームのさらなるアップデートも期待できるだろう。

 次戦の第5戦フランスGPは、2週間後の5月10〜12日にル・マン-ブガッティ・サーキットにて開催される。