初勝利はお預けだが先発の仕事は果たす

 5月10日のロッテ7回戦(エスコン)は胸躍るマッチアップだった。エスコン初見参の佐々木朗希に、21歳の福島蓮が挑んだのだ。福島は今春、育成契約から支配下登録に昇格した190センチの大型右腕。佐々木朗希が岩手県陸前高田なら、福島は青森県八戸市出身だ。同じ東北出身、朗希はずっと憧れの存在だったという。敵地のソフトバンク戦で3タテを食らった後、若い福島にカード頭を任せ、しかもそれが朗希とのマッチアップなのだ。ファンはしびれる。福島本人のモチベーション爆上がりだ。
 
 これがなかなか見応えあった。ファイターズ打線は狙い球を絞って佐々木朗希を5回2/3(123球)8安打、5得点と攻略する。一方、福島蓮は4回1/3(80球)5被安打、3失点の内容だったが、スターターとしての役割は何とか果たせた。課題は制球面だったと思う。これで3試合(3先発)登板して14回1/3、14被安打、2被本塁打、自責点6、防御率3,77だ。角度のある150キロ台のストレート中心に試合を作っている。今はあらゆることが経験なので、チャレンジを続けてほしい。もう伸びしろしか感じない。数年後、ファイターズのエース格になっていてもぜんぜんおかしくない。早く初勝利が見たいなぁ。彼が投げると、特に鎌ケ谷育ちの若手中心に「フクシマを勝たせたい」とスイッチが入るのがわかる。
 
 で、今回は福島効果の話を書きたいのだ。今年のGW、鎌スタに出かけて、感じ入ったこと。
 
 関心のある方はぜひ鎌ケ谷を訪ねてほしいのだが、ファームの雰囲気が一変している。2軍監督が木田優夫さんから稲葉篤紀さんに代わったのもあるだろう。選手の出場機会をシステマチックに決めてる感じは木田さん時代と変わらないのだが、プレーしている選手のハツラツさが違う。野手に関しては田宮裕涼、水野達稀の活躍が大きいだろう。煎じ詰めれば「裕涼効果」だ。ついこないだまで2軍で一緒に汗を流してた田宮が上で大ブレークしている。「オレもやれる」、「オレにもチャンスをくれ」と思わない選手はいない。
 
 これは単純に木田さん稲葉さんの監督としての能力みたいな話じゃないだろう。同じ釜の飯を食った仲間から大飛躍する選手が出た刺激だ。大飛躍の元をたどれば木田さん時代に培ったものが効いてるかもしれない。そこに稲葉さんのモチベーターとしての資質が加わった結果なのかもしれない。いずれにせよ、鎌ケ谷はやる気マンマンだ。イースタンリーグでも目下、首位を走っている。5日の楽天戦では大活躍した今川優馬、野村佑希が試合途中で上がって、そのまま荷物をまとめて福岡(1軍のソフトバンク戦)へ旅立った。あれは象徴的だったなぁ。みんな、いつコールアップされるかわからない。想像してみてほしい。さっきまで試合に出てた同僚が試合中、1軍のアウェーへ向かうのだ。みんなの前で言われなくても、そんなの気配でわかるだろう。

ストレートで押せる投手がズラリ

 で、まったく同じことが「福島効果」でも言える。福島蓮はずっと評判が高かった。吉田輝星をトレードに出した背景に福島の成長があったのでは、と鎌スタに通う2軍ファンが噂したものだ。春先に支配下登録されたときはみんな「やっぱり」と思った。じゃ、2軍の投手陣はどう思うか。1軍で先発登板の機会をもらう後輩(ま、福島は21歳だから大体の選手にとっては後輩だろう)をどう感じるか。
 
 またこの5月は同じく大型右腕の柳川大晟も支配下登録となった。こちらも191センチの20歳だ。150キロ台後半のまっすぐを持っている。ずっと止まっていた「下からの選手供給」が始まった。この意味である。
 
 先に挙げた5月5日イースタン楽天戦を例に取ろう。畔柳亨丞→細野晴希→山本拓実→ザバラというリレーだった。驚いたのは全員が150キロ台の強いストレートを投じていたことだ。ファイターズのファーム投手陣は「こじんまりまとまっていて、球威で押してくるタイプが少ない」的な評価が多かったと思う。そのときに比較されたのはオリックス投手陣、特にブルペンスタッフだ。オリックスの後ろはすごいじゃないですか。それは優勝という結果にしっかり結びついている。
 
 僕はファイターズもそうならないかなぁと夢想していました。パ・リーグはパワーピッチャーの時代を迎えています。トッラクマン、ホークアイ、ラプソードといったデータ解析のシステムが整い、筋トレのメソッドも進化している。あとマウンドが固くなりましたね。昔はプロの速球の基準って一応、140キロだったと思うんです。今は2軍で150キロが見られる。150キロ台ってひと昔前なら江川卓、松坂大輔の数字ですよ。
 
 鎌ケ谷見に行ってもらいたいなぁ。すぐにでも1軍で飛躍しそうな選手がいっぱいいる。ていうか、今の話ですけど、ザバラなんかね、160キロ出してました。鎌スタの至近距離で160キロ見れちゃうんだ。クルーンの頃なんか、みんなそれを見に球場通ったじゃないですか。
 
「福島効果」に話を戻しましょう。それは2軍に最高の刺激を与えている。近々、「柳川効果」もあらわれるのじゃないか。もう、ホントにワクワクしてくるのだ。