阿部寿樹

 4月9日のオリックス戦(京セラドーム)。チームが6回に1点を返し、2点差に詰め寄った直後の守備だった。この回の先頭打者、杉本裕太郎の放った飛球は三塁ファウルゾーンへ上がった。三塁で先発出場した阿部寿樹は打球の行方を確認すると背走。一度はボールから目を離したが、フェンスを越えそうな飛球をグラブを伸ばしてキャッチした。

 守備はもちろん、バットでもチームをもり立てた。4点を追う4回一死一塁では、センターへフェンス直撃の適時三塁打。チームは4対5で惜敗したが、4打数2安打2打点と躍動した。

 中日からトレードで移籍した昨季は78試合出場で、打率.255、4本塁打、24打点。満足の行く結果は残せなかった。今春キャンプでは本職の内野に加えて外野にも挑戦。3月30日の西武戦(楽天モバイル)に二番・一塁で先発すると、31日の同戦は六番・左翼でスタメン。序盤の30試合を終えた時点では、異なる3つの位置で先発出場したチーム唯一の選手となっている。
 
複数のポジションをこなせる理由は、本人にとってはシンプルだという。「やっている以上は試合に出たい。しっかり結果を残したい」。不慣れな外野でも定位置をつかめるよう、34歳がキャンプから意欲的に汗を流してきた。首脳陣は、その取り組む姿勢を含めて評価する。

 昨オフは浅村栄斗との合同自主トレに参加。打撃はもちろん、守備でも吸収できる部分は吸収してきた。チームで貴重な右打者は、位置にこだわらず多くの試合に出場し、勝利に貢献する。

写真=BBM