「チャレンジャーの気持ち」



慶応高の右腕・小宅はテンポの良い投球で県大会4回戦進出に貢献した[写真=BBM]

【4月13日】
春季神奈川県大会3回戦(等々力)
慶応高13-3湘南学院高
(6回コールド)

 調整不足を感じさせない、貫録十分の投球だった。慶応高の145キロ右腕・小宅雅己(2年)は湘南学院高との県大会3回戦で先発。4回を投げ、1安打無失点に抑えた。「6〜7割の出来。段階を踏んでいる」と言いながらも、許した走者は1安打のみで、ほぼ完璧な投球を披露している(チームは13対3で6回コールド勝利)。

 公式戦での登板は、敗退した昨秋の桐光学園高との準々決勝以来。慶応高は昨夏の甲子園で107年ぶり2度目の全国制覇を遂げた。背番号1を着けた小宅は全5試合に登板し、救援した仙台育英高(宮城)との決勝では胴上げ投手となった。同夏の神奈川大会からの疲労蓄積により、準備期間が短かった秋は、本来の力を出し切れなかった。小宅はもともと、腰にも不安を抱えており、冬場は休養を最優先。春までのコンディションづくりもやや遅れ、今大会は背番号11を着けている。

「夏に向けての過程なので……。ここが、ゴールではない」

 県央宇都宮ボーイズ時代からバッテリーを組む、高校通算23本塁打の主将・加藤右悟(3年)は「練習試合でも組んでいますが、変わらず良い感じ。これからまた、上がってくると思います」と、手応えを口にする。

 小宅にも、焦りは感じられない。これも、甲子園でしか味わえない「経験値」からくる自信の裏付けだ。全国優勝投手の肩書きにも「チャレンジャーの気持ち。重たく感じたことはありません」と、自然体を強調する。

 小宅には勝負の夏に向けた、2つのモチベーションがある。まずは、史上7校目の「夏連覇」(3連覇の中京商高を含む)だ。

「今年のチームで、優勝したい。(県大会3回戦では5人の2年生野手が先発し)頼もしい後輩ばかり。個々が強いチームです。自分たちがやるべきことは分かっている。つなぎが出てきたら、強いチームになる」

 そして、もう一つは広陵高の右腕・高尾響の存在である。高尾は2年春から今春まで、3季連続で甲子園勝利。昨夏の甲子園3回戦では小宅は6回2失点で、先に降板。リリーフ陣の好投により、延長10回タイブレークを制した。「もう一度、甲子園で投げ合いたい」。

 慶応高を背負う主戦投手としては「自分が投げて、チームを勝たせる」と自覚十分。まずは、今春の県大会で神奈川を制し、関東大会でも頂点を狙い、夏へと弾みをつけていく。

文=岡本朋祐