「強打の捕手」としてアピール



開幕から強打を見せている田宮

 日本ハムからスター選手が誕生間近だ。プロ6年目の田宮裕涼は規定打席に到達していないが、打率.389のハイアベレージをマークしている。

 巧みなバットコントロールで広角に打ち分ける。「ゆあビーム」と称される強肩に定評があったが、打撃も磨かれて入団時から見違える姿に変貌している。頭角を現したのは昨年のシーズン終盤だった。9月25日の楽天戦(エスコンF)で田中将大から右翼席にプロ初アーチ、10月1日のソフトバンク戦(PayPayドーム)で石川柊太から逆転の2号右越え3ランを放つなど、10試合出場で打率.258、2本塁打、9打点、2盗塁をマーク。「強打の捕手」としてアピールした。

 今年は自身初の開幕一軍切符をつかみ、3月29日の開幕・ロッテ戦(ZOZOマリン)に「九番・捕手」でスタメン出場。23歳は大舞台でも堂々としていた。

「緊張感はありましたが、地元・千葉のZOZOマリンでの開幕戦だったので、そこまで緊張し過ぎずに済みました。高校時代(成田高)はマリンで2回、負けました。高2と高3の夏は、そこで負けて。でも、プロに入ってからもファームの試合がたまにマリンで開催されたりしていて出場していたので、ちょっとほかの球場よりはやりやすい感じはあります。もし、これが福岡とか違う敵地だったら、もっと緊張していたと思います。開幕戦のセレモニーもすごくて、小学校のときにロッテジュニアに入っていたこともあり、ちょっとロッテファンの気分で見ていましたね(笑)」

 2打数2安打で犠打もきっちり決め、守備面でも伊藤大海を好リードで引っ張り、4対1で快勝。最高のスタートを切った。

力強いスイングで対応


 捕手は守備面の負担が大きいが、田宮はバットでの貢献度が高い。3日の楽天戦(エスコンF)から3試合連続マルチ安打をマークし、規定打席に到達してリーグトップの打率.524に。結果だけでなく、打席の内容も濃い。3月31日のロッテ戦(ZOZOマリン)では、難敵の佐々木朗希に2打席で無安打に終わったが計17球を投じさせた。4月5日の西武戦(エスコンF)でも、2回の第1打席で空振り三振に倒れたがファウルで14球粘った。その後の打席で自身初の猛打賞を記録し、チームの逆転勝利に貢献。7日の西武戦(エスコンF)でプロ初の「一番・捕手」でスタメン出場するなど、新庄剛志監督の期待値が上がっている。

 他球団のスコアラーは、「昨年のシーズン終盤に一軍に出てきたときから良い打者だなと思いました。近藤健介(ソフトバンク)と重なりますよね。ギリギリまで見極めて160キロ近い直球にも強いスイングできっちり対応できる。カットで逃げるというのではなく、ヒットを打ちにいってファウルになっているので神経を使う。変化球にも軸がぶれないのでなかなか空振りが取れない。甘く入ったら長打があるし、厄介な選手です」と警戒を強める。

昨年は万波が大ブレーク


 成田高からドラフト6位で入団。同学年の同期には吉田輝星(現オリックス)、野村佑希、万波中正、柿木蓮と甲子園のスター選手がそろっていた。甲子園出場経験がない田宮は注目度が高くなかったが、ファームで力をつけて大輪の花を咲かせようとしている。

 万波がブレークしたことも大きな刺激になっているだろう。昨年、万波は自己最多の25本塁打をマーク。タイトルには1本差で届かなかったが、自身初のベストナイン、ゴールデン・グラブ賞を受賞した。

 万波は週刊ベースボールのインタビューで同期入団の選手たちの存在について、「めちゃめちゃ大きいですね。特にジェイ(野村佑希)は、入団から同期で同学年で、ずっと自分の先を走ってきた選手なので。もちろん今でも変わらずそういうふうに見てますけど。やっぱりジェイに追いつけ追い越せでやってきて、そういう中で一緒にクリーンアップを打てたりっていうのは、すごくうれしいことだなと思います。同時に、僕らくらいの年代の選手がこれだけ多いので、もっともっとチームの中心にならなきゃいけないっていうのはすごく感じます。僕らがもっと、1段階、2段階レベルアップしないと、ファイターズが上位争いしていけるようにはならない。そこは本当に、その気になってやっていきたいです」と語っている。

 田宮も万波に続いてブレークできるか。2年連続最下位からの巻き返しに向け、若い力の台頭は不可欠だ。

写真=BBM