レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、ロシアのサイドカーブランド「ウラル」が、日本で販売されていることが不思議だと言います。どういうことなのでしょうか?

2輪でも4輪でもない、不思議な魅力を放つノリモノ

 2024年春に開催された東京モーターサイクルショーの会場で、僕(筆者:木下隆之)の関心を一際引き付けたのが「URAL(ウラル)」の展示ブースでした。その特異なフォルムはレトロ感満載です。第2次世界大戦時代の軍用バイクを思わせるデザインに興味が掻き立てられたのです。

武骨でレトロ感満載のウラル車両に魅力を感じる。『第51回 東京モーターサイクルショー』(2024年3月22日〜24日開催)にて
武骨でレトロ感満載のウラル車両に魅力を感じる。『第51回 東京モーターサイクルショー』(2024年3月22日〜24日開催)にて

 ウラルはサイドカー専用メーカーです。興味本位でそのシートに着座したのですが、武骨な感覚は否めず、あくまでイメージですが、操縦は決してイージーではなく、慣れるにはコツが必要そうでしたし、パッセンジャーシートでのツーリングにも忍耐が必要なのかもしれないと覚悟しました。快適性よりも、そのレトロな雰囲気が魅力なのだろうと想像したのです。

 じつは、僕の興味を鷲掴みにしたのは、それがロシアのブランドであることです。と言っても、そのルーツが旧ソ連時代にあるだけで、2000年代にはアメリカでの事業拡大を進めてアメリカ国内に会社を設立し、現在のウラルは当初から大きく生まれ変わったのです。

 しかし製造はロシアであろう車両が、いまこうして日本のマーケットで販売されていることが不思議でならなかったのです。

 ロシアがウクライナ侵攻を開始したのが2022年2月24日未明のことです。それから現在まで戦争を続けており、停戦する気配はありません。

 それに対して、世界の主要国は経済制裁を課しています。ロシア製品の輸入や輸出に条件をつけたのです。当然ウラルもそのあおりを受けているだろうし、そんな状況のなか日本で販売されていることが不思議であり、驚きでもありました。

 日本にはウラル・ジャパンがあり、並行輸入とは立場が異なり、正規輸入されているようです。そしてウラルの本拠地も現在はロシアではなくアメリカです。それでもさまざまな困難に見舞われてきたのですが、工場をロシアからカザフスタンに移転することで、物流の障害をクリアにしたそうです。

 ちなみに、ウラルという名称はロシアを南北に連なるウラル山脈に由来します。これまでに81年の歴史があります。その名を冠していることからも、まごうこと無きロシア発祥のバイクなのですが、このような危機を迎え、世界中のファンに製品を届けるために生産拠点を変え、物流のルートを新たに開拓することで、販売継続が可能になったそうです。

 クルマでも中国のBYDや韓国の現代などが日本に正規輸入されており、販売は好調のようです。ウラルも車両として魅力があります。今後の販売状況にも興味が注がれます。