「1976年の新宿ロフト」 [著]平野悠

 本書の著者・平野悠氏は、ライブハウス「ロフト」の創業者だ。彼は1970年代、7坪のジャズスナック「烏山ロフト」を振り出しに、音楽家が自由に演奏できる空間の創出を目指し、次々とライブハウスを作った。
 まだ日本に「ライブハウス」が少なかった時代、「ロフト」に集まったミュージシャンは坂本龍一や細野晴臣、RCサクセションなど枚挙にいとまがない。そんななか、76年に誕生したのが、300人収容の「新宿ロフト」。今では誰もが知る多くのミュージシャンが、その地下のスペースから歴史を築いた。
 平野氏が当時の様子を回顧する本書に描かれているのは、日本のロック・ミュージックの黎明(れいめい)の光景。ロックやパンク、ハードコアの坩堝(るつぼ)として、ロフトが提供し続けた「空間」とはいかなるものだったのか。「日本のロックの始まり」をつぶさに見てきた創設者による、貴重な証言に満ちた一冊だ。