ニコニコと笑う76歳のおじいちゃん。今から73年前、自分が3歳の時に作られた古いクレヨンでお絵描きをしてみると……? そんな動画が話題です。

73年前のクレヨンを持つ柴崎春通さん(YouTubeより) / Via youtube.com

“おじいちゃん先生”の愛称で親しまれている、水彩画家でYouTuberの柴崎春通(しばさき・はるみち)さんが、3月9日に自身のYouTubeチャンネル「 Watercolor by Shibasaki 」を更新しました。
「時を越える感動! 柴崎おじいちゃんが73年前のクレヨンで描く」という動画を 投稿したところ、 「73年分の画力が乗っている……」「魔法使いだろこれはもう」などと反響を呼んでいます。
今回の動画は、柴崎さんが入手した73年前のクレヨン「ホームランパス」で、雌鶏と雄鶏の絵を描くという内容。終戦からまもない1950年のもので、大日本文具(現在のぺんてる)から中学生向けに発売されていたそうです。

クレヨンの紹介から始まる、優しさに満ちたお描き動画

実際に動画を見てみると、クレヨンを手に持ってニコニコと笑う柴崎さんの笑顔がまぶしい導入から、心をグッとつかまれる内容になっていました。本当に、いい笑顔……!

まだ中身を見ていないという柴崎さん。73年前に作られたというクレヨン「ホームランパス」の箱を開けてみると、その保存状態にビックリ。
1950年といえば太平洋戦争の敗戦からまだ5年。まだ日本も復興途上でした。その時代のクレヨンとは思えないくらい、形も整っています。

実際に描いてみると……やはり時の流れを感じるところも?

ですが、やはり73年前のクレヨン。描き始めていると、少し色が乗りにくくて描きづらそうです。
柴崎さんは硬くなってしまった原因を、顔料とパラフィンで固められたクレヨンの油分が飛んでしまっているからではないか、と推測していました。

YouTube「Watercolor by Shibasaki 」より / Via youtu.be

とはいえ、色自体はとてもきれいです。しかも、ゴシゴシと描いていくうちに表面が削れると、内側の新鮮なクレヨンが顔をのぞかせて描きやすくなっていきます。本当に73年前の製品とは思えないくらい、しっかりしたクレヨンです。
クレヨンができた時代に思いを巡らせて話を続けながらも、魔法のように色をつけていく柴崎さん。会話しながら、どんどん絵が出来ていくのがすごい……! まだ途中なのに、立派な絵ができそうな下地を感じます。

「戦争を生きながらえた人が使命感に突き動かされたのでは」クレヨンが作られた時代背景に思いを馳せる

「日本は第二次世界大戦で大負けに負けてしまったときなんですよ」
お絵かきをしながら、クレヨンが作られた時代背景に思いをめぐらした柴崎さん。「本当に食べるものがない時代に、よくこういうものを作ってくれました」と感慨深げでした。
材料を集めるのも大変だった時代に、「戦争を生きながらえた人たちが、これからの子ども達に使ってもらおうという使命感に突き動かされたのではないか」と想像を働かせています。
「お昼ご飯を食べられない子もいたし、柴崎たちの履いているズボンにも穴が空いてたりしたんですね」と小学校時代の思い出を語りつつ、その5年前に「よくぞここまでこういう物を作ってくれたと思います」と称賛していました。

YouTube「Watercolor by Shibasaki 」より / Via youtu.be

そして完成……って、うますぎる!

当時の背景をいろいろと想像しつつも、筆は止まりません。そうこうしているうちに、20分ほどで絵が完成。写実的に描きこまれた雌鶏と雄鶏が、とてもカラフルです。
いや、本当に絵が上手! ここまできれいに絵を完成させている柴崎おじいちゃん先生の技術も、73年経っても使えるクレヨンも、どちらも年月を重ねることの素晴らしさが感じられます。感服しました……!

YouTube「Watercolor by Shibasaki 」より / Via youtu.be

SNSの返信や動画のコメント欄でも、
💬 「柴崎おじいちゃんの『そうはならんやろ』がとっても好き」
💬 「73年分の画力が乗っている……」
💬 「何度も止めて見て感動してしまった」
💬 「魔法使いだろこれはもう」
💬 「芸術の先人達への敬意に溢れてて感動する」
など、柴崎おじいちゃん先生の画力と、73年の月日を保ったクレヨンの両方を褒めるコメントが見られました。
また、動画のようにクレヨンを作った人たちを想像する人や、柴崎さんの優しさに感動した、という声も多く寄せられていました。

柴崎さんのマネジメント担当者にお話を伺いました

――今回使った「73年前のクレヨン」は、どこから入手したのでしょうか?
メルカリです。即決で買いました。
――なぜ「73年前のクレヨン」という画材を題材に選ばれたのですか?
最初は画材レビューの一環として、柴崎先生が生まれたころの時代の画材を検証してみようという企画から始まったのですが、動画を撮影していく中でさまざまな発見や驚きがありました。
パッケージを開けてみると、しっかりとした作り込みがなされており、クレヨンを取り出して描いてみると、もちろん経年劣化はあるものの、70年以上昔の画材とは思えない。今のクレヨンと変わらぬ、しっかりとした鮮やかな発色に驚かされました。
戦後間もない物資の調達が大変困難な時代に、未来を生きる子どもたちのために、これだけの内容の品物を作りあげた当時の職人さん、製造者の方たちの真摯な姿勢や努力に、大いに感動させられ、また感謝の気持ちでいっぱいになりました。
――実際に「73年前のクレヨン」を使ってみて、どのような印象を持たれましたか?
経年劣化があるものの、想像以上に発色もよくクオリティが高いことに驚かされました。
・・・・・・
柴崎さんは、この動画以外にも「人生にアートを、心に喜びを」というコンセプトとともに、絵を描くことが好きになれる楽しい動画を「 Watercolor by Shibasaki 」で定期的に投稿しています。
最新の投稿では、初心者向けにクレヨン画の描き方を解説。流れるようにライオンを描く動画で、お絵描きの楽しさを伝えています。今回の動画を見て描いてみたくなった人は、ぜひこちらもどうぞ!