末期の腎臓病を患っていた男性が、遺伝子を改変したブタの腎臓を移植する手術を受け、4月3日に退院した。脳死状態ではない患者で、世界で初めての成功例となる。

術後の経過は良好だという。手術を行なった米東部マサチューセッツ総合病院(MGH)が 発表 した。

*ブタの腎臓移植手術を受けたリチャード・スレイマンさん(左)と、手術にあたった医師ら(右)*

末期の腎臓病を患っていたスレイマンさんは、2018年に死亡したドナー患者から腎移植手術を受けたが、腎機能が低下していたという。

4時間にわたる手術を行なったのは、腎移植分野が専門のレオナルド・V・リエラ医学博士、河合達郎夫医学博士、ナエル・エリアス医学博士だ。

河合氏は発表で、次のように述べた。

「今回の成功は、数十年にわたる何千人もの科学者と医師たちの努力の集大成です。この画期的な出来事で重要な役割を果たせたことを、光栄に思います。この移植法により、腎不全に苦しむ世界中の何百万人もの患者に、命綱を提供できればと願っています」

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全米臓器分配ネットワーク(UNOS)の統計では、アメリカで10万人以上が臓器移植を待ち望んでおり、毎日17人が移植を受けられず亡くなっている。

米国腎臓学会誌に掲載された論文によると、腎臓は移植が必要とされる最も一般的な臓器であり、アメリカにおける腎臓病の末期患者は2030年までにで29〜68%増加すると推定されている。

スレイマンさんの主治医、ウィンフレッド・ウィリアムズ氏は「極端なドナー不足」と「少数民族にとって腎臓移植の機会が少ないシステム上の障壁」を指摘した。

「腎臓移植の進歩によって臓器を豊富に供給できるようになれば、やがて健康の公平性を達成できます。移植分野の先駆者となったスレイマンさんの勇気を称えたいです」