猫は好奇心旺盛な動物であちこち歩き回るため、奇妙な光景と遭遇することも珍しくありません。そして未知との遭遇は猫に思いも寄らないリアクションをもたらします。

キジトラ猫のちびすけ君は5月5日の夜、お風呂場で見たこともないものを発見。あまりの不審さに驚き直立不動になった姿を見られてしまいました。

湯船にぷかぷかと浮かんでいるのは葉菖蒲(はしょうぶ)。日本では端午の節句を迎えると、厄払いのために菖蒲を風呂に入れて浸かる習慣が奈良時代より続く行事として定着していますが、こちらのお宅でも毎年5月5日は菖蒲湯をしていると言います。

しかし、ちびすけ君が菖蒲を見たのは、この時が生まれて初めてのこと。人間から見れば植物であることは一目瞭然ですが、猫からすれば生き物かどうかも分からない得体の知れない物体。そのため、より見やすい高い位置から確認したかったのでしょう。後ろ足ですっくと立ち上がっている姿は、まるで普段から2足歩行をしている動物みたい。若干腰が引けてるコミカルな立ち姿と、真剣な表情のギャップが笑いを誘うワンシーンです。

このエピソードを飼い主さんがSNSのXに投稿したところ、4万件近くの”いいね”が付くほどの大反響。写真を見たユーザーからは「めちゃくちゃ笑いました」「ミーアキャットみたい」「そのままスタスタと歩き出しそう」「猫の恩返しでこんなシーンあったな」など、たくさんのメッセージが寄せられて注目を集めています。

このちびすけ君は毎晩、飼い主さんが入浴している時に洗面器でお湯を飲むのがお決まりの行動パターン。飼い主さんはその光景をほぼ毎日定点観測するように撮影しているのだそうで、今年の5月5日もそのつもりでスマホを持って浴槽に浸かっていたそうです。しかし、菖蒲湯だったこの日は様子が違いました。

浴室に入ってきたちびすけ君は、いつものようにお湯を飲むかと思いきや、湯船に浮かんでいる菖蒲の存在に気づくとすぐに立ち上がったので、ビックリしたという飼い主さん。「とても驚いて警戒していたようですが、怯えた様子はなかったので、好奇心が勝ったのかなと思います。」と当時の様子を振り返ってくれました。この後、ちびすけ君は10数秒ほど立ち尽くしたかと思うと、長居は無用と判断したのかスッと元の体勢に戻り、そのまま浴室を出て行ったのだとか。

ユニークな立ち姿を披露してくれたちびすけ君は、もうすぐ2歳になる男の子。飼い主さんとの出会いは、大雨の日に親猫とはぐれて鳴いているところを保護されたのがきっかけでした。しかし、飼い主さんはその頃、お家ですでに4匹の先住親子猫と安定した生活を送っており、そこへ新たにもう一匹加えることについては色々悩んだそうですが、最終的には家族として迎え入れることを決断します。そんなちびすけ君は、社交的で好奇心旺盛な性格もあってか、先住猫たちの中に積極的に溶け込んいき、今では一緒に仲良く過ごしているのだそう。

今回インタビューに応じてくれた飼い主さんは、小説家の椹野道流(ふしの みちる)さん。これまでに『奇談』『にゃんこ亭のレシピ』『鬼籍通覧』などのシリーズ作品を執筆している一方で、昨年にはちびすけ君との出会いや成長をつづったフォトエッセイ『ちびすけmeetsおおきい猫さんたち』(三笠書房)を刊行。また、Web小説サイトのカクヨムでは猫たちとの日常を描いたエッセイ『猫と私』が隔週で連載されています。