正看護師&ロリータモデルの二刀流で活躍する青木美沙子さん。40歳になる現在も外務省お墨付きの「カワイイ大使」として世界中にロリータファッションの魅力を伝えています。ロリータへの偏見や海外でのロリータの人気ぶりなど「ロリータのいま」について伺いました。(全2回中の2回)

男性にも人気!中国で盛り上がるロリータ文化 中国で開催されたイベントでのサイン会中国で開催されたイベントでのサイン会

── ロリータについて海外でも発信していますが、きっかけを教えてください。

青木さん:学生の頃からロリータファッションが好きで、看護師をしながら読者モデルをしていたのですが、25歳のときに日本の外務省から世界に日本のポップカルチャーであるロリータを発信する「カワイイ大使」に任命されました。「カワイイ大使」は「Japan Expo」など海外で開催されるイベントに参加して、ファッションショーやサイン会、お茶会などを行い、たくさんの人に日本の文化を知ってもらうのが役割です。日本ではあまり知られていませんが、ロリータは「日本発祥の文化」なんですよ。

── これまで、「カワイイ大使」として、どのような国に行かれたのでしょうか?

青木さん:ヨーロッパ、アメリカ、南米、アジアなど、さまざまです。これまでの15年間の活動で25か国、50都市以上を訪れました。コロナ禍で海外イベントの仕事がなくなった時期もありましたが、2023年の春頃から徐々に再開して、今はまたいろいろな国のイベントに参加しています。だいたい1回の訪問で1週間ほど滞在することが多いですが、ブラジルなど遠い国に行くときは1か月になることもあります。

アメリカや南米は、ロリータファッションの日本企業が進出するなど勢いがありますが、最近ロリータ文化が特にさかんなのは中国です。SNSなどをきっかけに5〜6年ほど前からブームになっています。私も頻繁に足を運んでいます。人口が日本よりも多いぶん、ロリータ人口も増えて、とても盛り上がっていますよ。

中国のイベントでファンのみんなと記念撮影中国のイベントでファンのみんなと記念撮影

── 中国で人気が出たのには、なにか理由があるのでしょうか?

青木さん:中国人の美意識と親和性が高いのだと思います。日本人って保守的なところがあるため、人よりも目立つロリータファッションには抵抗がある人も多いと思います。逆に、中国人は「いかに目立ってSNS映えするか」という考えの人が多く、目立てるロリータファッションはその点においてぴったりなんですよね。

日本では、ロリータファッションに身を包む女性って、男性からはモテないイメージがありますよね。アンケートで「デートに着てきてほしくないファッション第1位」に選ばれた、なんて声も聞きます。

でも中国の男性は、デートの日にロリータファッションに身を包んだ彼女がやってくると、「僕のためにこんなにおしゃれをしてきてくれるなんて嬉しい!」と感じるそうです。自分の彼女がロリータファッションに身を包むのを喜んで自慢に思ってくれる男性が多いため、自然とロリータファッションを好きになる女性も増えてきたんだと思います。ロリータのイベントにカップルで参加している人も多いですよ。

しまむらさんコラボのお洋服。ロリータファッションってかわいい!しまむらさんコラボのお洋服。ロリータファッションってかわいい! 年齢にとらわれずに好きを突き詰めてほしい

── 日本では「ロリータファッション=若い人が着るもの」というイメージがあります。青木さん自身、そのように感じたことはありますか?

青木さん:私は現在40歳ですが、25歳を過ぎてから何度も「ロリータババア」などの言葉を浴びせられたことがあります。「25歳を過ぎたらもうおばさん」という価値観が日本人の意識にあるようです。取材を受けていて、「何歳までロリータファッションを続けますか?」と聞かれることもしょっちゅうです。

日本では年齢によって「何歳になったらこれはNG」というような、レッテルが貼られるものが多くあるように感じます。たとえば「ミニスカート、ツインテール、ピンク色は25歳まで」「結婚は30歳までに」など、なんとなく5歳単位でものごと区切っているような気がしますね。ロリータファッションもそれと同じで、若い子がするファッションと思われがち。40歳で大きなリボンをつけていると、「変わった人」などと言われてしまうんです。

甘ロリなお洋服。「年齢に縛られたくない」と語る青木さん甘ロリなお洋服。「年齢に縛られたくない」と語る青木さん

── 確かにそのようなイメージはあるかもしれません。

青木さん:でもそれってすごくもったいないことだと思いませんか?よく「5歳単位で目標を設定する」なんて言いますが、達成できなかったからと凹んだり諦めたり、劣等感を抱くのはもったいないと私は感じてしまいます。

なので、このような考え方を撤廃したいと常々思っています。自分の人生は自分が主役だから、年齢にとらわれずに好きなことを突き詰めたらいい。私自身もロリータファッションを続けることで、年齢とともにたくさんの壁にぶち当たりました。だから今はあえて自分の年齢を公表することで、同じようなことで悩んでいる人に勇気を与えられたらいいなと。

自宅のロリータ部屋にて自宅のロリータ部屋にて

── 今後やってみたいことはありますか?

青木さん:最近は年齢を重ねた人でもロリータファッションを楽しめる、プロデュース業にも力を入れています。そのおかげで40代、50代、60代でもロリータファッションを楽しめる人が増えたと感じているので、今後も続けていきたいです。

ロリータモデルの仕事も需要がある限り、全力で続けていきたいですね。私自身、一般の人に近い読者モデルのような感じなので、見た人が「青木美沙子が着られるなら私でも着られる」と思ってくれればいいなと。今後もロリータファッションを着続けて年齢を更新していくので、みんながついてきてくれたら嬉しいです。

PROFILE 青木美沙子さん

1983年千葉県生まれ。訪問看護とロリータモデルの仕事をしながら、カワイイ大使として海外にロリータ文化を普及。現在はメーカーとコラボして、プロデュース業なども行っている。

取材・文/酒井明子 写真提供/青木美沙子