歌舞伎俳優の片岡仁左衛門(80)と長男の片岡孝太郎(56)が6日、東京・ホテルニューオータニで能登半島地震チャリティーイベントを開催。仁左衛門は一世一代の気迫あふれる”1人勧進帳”を熱演。物語の舞台(安宅の関)にもなった被災地の復興へエールを送った。

 声を変えながら弁慶や富樫、義経らの登場人物を1人で演じ分ける「聞く勧進帳」の上演は3度目。「だいたい20年ごとにやっている」(関係者)というレアな演目で、仁左衛門は開演前に「残念ながら私は『勧進帳』をこれから舞台でどの役も演じることはございません」とあいさつした。「一世一代かもしれません」という孝太郎の予告通り、集大成を思わせる力強い声で膨大なせりふを広い会場の隅々にまで響かせ、詰めかけた818人の観客を魅了。孝太郎も舞踊「松の緑」に初役で挑み、松の若葉に復興への祈りを重ねて華麗に舞った。

 今回のイベント参加費は1人2万円。すべてボランティアで運営し、唯一の経費だった会場費や設営費もホテル側の計らいで通常の半額以下となり、合計1379万4955円が義援金として石川県庁に送られる。

 仁左衛門は「大勢の方がご賛同くださいまして本当に胸がいっぱいでございます」と感謝。「出足が遅かったので、ちょっと2万円は高かったかなとか心配した時期もございました。義援金なので観劇料ではございません。見終わった後に『2万円は高かったな』とお思いにならないでください。おまけでございます」と軽妙なトークで何度も笑いを誘った。

 終演後、万雷の拍手に包まれた仁左衛門は1度だけせりふに詰まった失敗をわびながら「本当にもう…うれしいです。ありがとう!」と笑顔で叫んだ。会場では孫の片岡千之助(24)も見守り、孝太郎は「父は世界の音楽で一番音域が広い義太夫狂言を小さい時からきっちりやってきた。それが80を過ぎた体に染み込んでいるからできる。とにかく妥協しない」と”1人勧進帳”の難しさも解説しながら偉業をたたえた。