◇記者コラム「Free Talking」

 低反発の新基準バットになった今春のセンバツ高校野球は好投手が目立った。個人的には、創志学園(岡山)の左腕、山口瑛太投手が印象深い。初戦の別海(北海道)戦は、キレのいいスライダーも使って14三振を奪って4安打完封。2回戦で山梨学院に負けたものの好救援。10イニング2/3を無失点のまま甲子園を去り、U―18代表候補メンバー入りし、強化合宿にも参加した。

 宇都宮市で生まれて、作新学院の小川哲平投手は小学校時代のライバル。中学からは横浜市に引っ越し、元中日投手の前田幸長さんが会長の都築中央ボーイズでプレー。縁あって創志学園に進んだ。進学先の候補でもあった東海大相模の元監督だった門馬敬治さんが創志学園監督になったのはまさに奇遇。門馬さんが持ち込んだアグレッシブベースボール精神で花開いた。

 しなやかさもある体は中学時代から続けてきたトレーニングのたまものだ。父・弘治さんは、アメリカンフットボールの元日本代表。「フィジカルの大切さは息子に伝えてきました。動作に準じた体のつくり方をすることについては、アメリカンフットボールはたけています。勉強の塾には行かせてませんが、トレーニングには行かせました」。知人が運営する、プロのアスリートも通う体幹トレーニングの専門塾で教わった。

 大舞台で成果を発揮した瑛太投手には、双子の弟がいて小学校時代はバッテリー。同じように体幹トレーニングを受けて、ボーイズではともに投手となった。右投げと左投げでタイプも違うが、別の中学に行った方がいいと兄弟で話し合い、弟の颯太投手は皇学館(三重)に進んで、昨年は夏、秋ともに三重大会でベスト16だった。

 ことしの夏も、奥さんと一緒に愛車で、三重に岡山に、応援行脚で忙しくなる父は「仲がいい兄弟で、最後の夏はそろって甲子園に出てほしい」と思いを語った。聖地での双子の投げ合い。記者も見てみたい。(アマ野球担当・小原栄二)