◇16日 サッカー パリ五輪アジア最終予選兼U―23アジア杯1次リーグB組 日本1―0中国(ドーハ)

 大きな教訓となった。VAR全盛の昨今、軽率な行為は絶対にしてはならない。そしてよりフェアなプレーを心がけなければならない。

 1点をリードした前半16分、中国の選手がセンターバックで先発したDF西尾隆也(C大阪)の背後から近寄り、背中に体をぶつけてきた。誘っている。次の瞬間、西尾は相手を振り払うように腕を振り、肘が中国選手に当たったように見えた。喉元を抑え、大げさに痛がる中国選手。VARで検証の結果、オンフィールドレビューとなり、レフェリーは一発退場の処分を下した。

 西尾とこの中国選手はその前の日本のCKの場面でもやりあっていた。その流れで、相手の挑発に乗ってしまい、腕を振ってしまった。立ち上がりからボールを動かし、ワイドな攻撃で中国を圧倒した日本。前半8分には山田の速いクロスを松木がボレーでたたき込み、先制。その後も中国を攻め立て、力の差は明らかだった。しかし、たったひとつの軽率な行為が、試合の流れを一気に変えてしまった。

 1人少なくなった日本は中盤の山本に代えセンターバックの木村を投入。松木と藤田のダブルボランチを組み、4―4―1システムでブロックを形成して緊急事態に対応した。1人少なくなるとどうなるか。まず前線からのプレスがかけられなくなる。高い位置でボールが奪えなくなるから、攻められる時間が長くなる。

 中国は相手が1トップになるため、DFの攻撃参加が容易になる。実際、中国は前線に4人の選手を並べ、両サイドバックが果敢に攻め上がってロングボールとクロスでで攻め立てた。

 前半17分から耐える時間帯が延々と続く。それでも大岩監督の冷静な対応とGK小久保の好守、交代選手5人を含めた全員のハードワークで残りの73分、実際には追加時間を加えた86分をしのぎ切り、非常事態で大きな勝ち点3を手にした。ただ、中国がもっと数的有利な状況を生かし、3バック、2バックにして超攻撃的にきていたら、最後まで持ちこたえられただろうか。

 今大会2日目にして4人目の退場。初日にインドネシアの選手が2人、ヨルダンの選手が1人退場となっている。インドネシアの1人はVARによる一発退場だ。VAR導入で微妙なシーンも白黒はっきりつけられるようになった。VARに救われることもあるが、その逆もある。審判の判断を含め、今大会の流れとして、退場が増えることは十分考えられる。VARを味方に付けられるかどうか。そのためにはファウルしないでボールを奪いきる強さと技術を求められる。

 ◆大塚浩雄 東京中日スポーツ編集委員。ドーハの悲劇、1994年W杯米国大会、98年W杯フランス大会を現地取材。その後はデスクワークをこなしながら日本代表を追い続け、ついには原稿のネタ作りのため?指導者C級ライセンス取得。40数年前、高校サッカー選手権ベスト16(1回戦突破)。