ドジャース・大谷翔平選手の通訳だった水原一平容疑者は12日(日本時間13日)、銀行詐欺容疑でロサンゼルスの連邦地裁に出廷。保釈金2万5000ドル(約385万円)で保釈が認められた。

 米連邦検察の告訴状によれば、違法スポーツ賭博で約4100万ドル(約63億1000万円円)の負けを抱え、大谷の銀行口座から少なくとも1600万ドル(約24億6000万円)をブックメーカーに不正送金した。

 米スポーツ専門局ESPNは18日、「大谷の水原通訳はどうやって選手たちのライフラインになったか?」のタイトルで特集。2013〜17年に日本ハムで通訳を務めていた時代の同容疑者の献身的な仕事ぶりを、当時の外国人選手たちへのインタビューから浮き彫りにした。

 ミッチ・ライブリー元投手は「彼は自分にとってあっち(日本)での『ライフライン』だった。通訳は文字通り選手たちの延長線にいる。選手たちはコミュニケーション方法も書類に書き込む方法も持たない。通訳なしでは生きられない。自分は通訳を球団職員ではなく友人として見ていた」と語った。

 同元通訳はライブリーの日本へのビザ取得を手伝い、札幌の銀行に連れていき、口座開設と預金方法を教えたという。

 また、クリス・マーティン投手(現レッドソックス)の夫人の妊娠が分かった際は2人を病院に伴い、超音波検査にも立ち合って医師の説明を通訳した。球場ではチームメートやコーチ、監督らの会話やあらゆる指示(バント守備やスカウティングリポート、準備運動など)を逐一伝えていた。

 マーティンは「あまり話せることはない。だって、とにかく知らないから。妻と自分はイッペイの顔が四六時中ニュースに出るのを見て『奇天烈だね』と言い合っている。ショックを受けているし、泥棒だという話にうろたえている。万物は変化するし人も変わるものだが、とにかく理解できないんだ」と心境を語った。

 ライブリーは「イッペイがこういうことになる兆候はあったのか?」との質問には「イエスともノーとも言えない。たぶん、自分が思い出したくないというのもあるんだろうな。とにかく、彼がギャンブルについて話すのを聞いたことは一度もない。それに何らかの意味があるかも分からないがね。依存症はそういうものなんだろう? 一切人に話さず、隠す」と答えた。

 マイケル・クロッタ元投手は「イッペイがいなければ、自分は完全に迷子だった」と表現した。地下鉄の使い方や移動方法を教えてもらい、何度も食品店に伴われては、全てをいちいち説明してくれたという。そのため、クロッタは「『This is what this says(ここにはこう書いてあるよ)』という言い回しが頭にこびり付いてしまった」と語った。

 また、クロッタの夫人と息子が来日した際は、同元通訳が「成田空港でのトランジットが大変だろうから」と、職務外なのに札幌から成田へ飛び、サポートしてくれた。クロッタは「そんなことまでしてくれるなんて全く思っていなかった。チームが指示した仕事だと思っていた。でも、そうじゃなかったんだ。あいつはそういうヤツだった」と感謝した。

 クロッタの息子が動物に夢中だと知ると、同元通訳は札幌円山動物園への移動とチケットを手配し、幼稚園を探す手伝いをし、息子が病気になったときは医師を手配して病院に同行し、説明を通訳してくれたという。「あちら(日本)は本当に素晴らしかった。彼がいなければ、いろんな経験ができなかった。自分たちが望んだなるべく多くの文化的な体験を享受できるよう、彼は明らかに自分の仕事の枠から外れたことまでやってくれた」と振り返った。