前監督の契約期間途中での突然の辞任を受け、2カ月近く空席となっていたハンドボール男子日本代表(愛称・彗星ジャパン)監督問題は4月上旬、スペイン出身で2016、17年にもチームを率いたカルロス・デルガドさん(52)の再任で決着したかに見えたが、新監督の来日が最悪6月にずれこむ可能性があるなど、9大会ぶりに自力での出場を決めた今夏のパリ五輪に向け、なお不安要素は拭えない。4月中旬には3月の代表活動中に4選手が重大な規律違反を犯し、うち2選手が1年間の活動停止処分を受けるなど”逆風”が続く。

 スペインリーグの強豪クラブ「バルセロナ」の現指揮官でもあるデルガドさんは同リーグ戦が5月下旬まで残る。同時進行中の欧州チャンピオンズリーグでも8強入りを決め、さらに勝ち進めば、来日して実際に日本代表を指導するのは6月中旬以降にずれ込む。パリ五輪のハンドボール男子は開会式翌日の7月27日から1次リーグ開始。第2次デルガド・ジャパンは実質1カ月強で本番を迎えることになる。

 3日の就任発表会見も壇上に上ったのは日本ハンドボール協会(JHA)の宮本英範・専務理事と荷川取義浩・強化本部長(61)の2人で、デルガド新監督はスペイン国内からの画面越し、リモート参加だった。

 5月に予定している代表選考合宿も”リモート采配”となる可能性が大。荷川取・強化本部長は新監督に日本リーグの映像を送るなど密に連絡を取っており、問題なしを強調。16年1月の”第1次政権”時も、就任間もない同月のアジア選手権で30連敗中だった韓国を破るなど、日本を3位に導いており、短期間でチームを強化する手腕への評価は高く「われわれもワクワクしている」と期待感すら口にした。

 デルガド監督もこの日「モトキ(元木博紀=ジークスター東京)、タマガワ(玉川裕康=同)、ワタナベ(渡部仁=トヨタ車体)、カサハラ(笠原謙哉=Hordur)…」などと選手名を挙げ”日本通ぶり”を見せたが、時間的な制約があり、短期間で成果を出さなければならない難しいミッションであることは認めざるを得ない。「スピード、カウンターアタック、ミスの少なさなど、日本の武器を最大限に生かす」などと意気込みつつも「大きな変化はしないつもり。(前監督の戦術など)かなり多くの部分をベースとして使っていく」と路線を踏襲していく方針を示した。

 もともと、パリ五輪の男子ハンドボールは21年東京五輪覇者で開催国のフランスを含め、出場12カ国全てが世界ランキングでは日本より上位の”格上”。メダル獲得はもちろん、日本が次のステップに進むためにも「現実的な目標は8強入り」(同強化本部長)への道も極めて険しい。そこに今回のゴタゴタ劇。選手の動揺は想像に難くない。その愛称の通り、ほうき星のような勢いを取り戻し、快進撃を見せるかどうか。日本代表に残された時間は少ない。(内田修一)

 ◆行動規範への重大な違反問題 日本ハンドボール協会は13日、行動規範への重大な違反があったとして、男子日本代表4選手に代表活動停止処分を科したと発表した。3月24日起点でうち2選手は1年間、残り2選手は6週間で、より処分の重い前者2人はパリ五輪への道が断たれた形となった。

 同協会によると、1年間の代表活動停止となった2人は同代表合宿中、深夜に外出して飲酒後、第三者を宿泊施設に招き入れて規律違反行為をした。今回の件で、同協会は管理監督責任として宮本専務理事ら3人を厳重注意処分とした。