◇渋谷真コラム「龍の背に乗って」 ◇21日 阪神3−0中日(甲子園・降雨コールドゲーム)

 試合前から降っていた雨は、53分遅れでの開始後も降り続いていた。グラウンドコンディション不良、予報も悪し。内野部分への砂入れと整備は、通常の3、5回終了時も含めれば6度も行われた。

 佐藤輝へのあの一球…。あとひとつのアウト、いやストライクひとつ取れていれば、引き分けには持ち込めた。しかし、打球は右翼フェンスを越えていった。

 「バッテリーを信頼して勝負させた結果で、責任は私たちにあります。あの選択が良かったのかを話し合い、次につなげていきます」

 大塚投手コーチは勝敗を分けた佐藤輝への一球を、こう話した。2死一、二塁。フルカウントからストライクのスライダー。球種選択の是非とともに、交代期を指摘する声もあるかもしれない。松葉は代え時を迷わせる投手ではある。僕なりの判断基準は投球数でもイニングでもない。打者3巡目は要注意。彼のスタミナに難があるのではなく、打者が松葉の球筋に対応し始めることを見てきたからだ。

 ただ、打たれたのは事実だが、松葉を責める気も継投への「たら」もない。「あそこでは代えられないですよ」。テレビ解説を終えた岩瀬仁紀さんも同意見。この日に限って6回の継投は難しいのはわかっていた。梅野が3連投で計66球、橋本は2試合で計64球、勝野も前日に40球。土生はベンチから外しており「松葉を引っ張る」は、ゲームプランの根幹だった。

 そうなった要因は前日にある。前日の大敗を「ただの1敗で済まなくなった」と書いたが、その懸念は現実になった。久しぶりに先発が試合をつくったが、かといって連敗を止めるために「攻めの継投」に打って出るには、かなりのリスクが伴ったということだ。

 甲子園での3連戦、計25イニングで2得点。松葉を援護できず、才木に2週連続で打てなかった打線にも責任はある。4連敗。苦手の地方球場(ひたちなか)から昨季2勝9敗1分けの鬼門・東京ドームへとロードは続く。松葉が一人で投げきったこの敗戦を、何としても生かすしかない。