◇渋谷真コラム「龍の背に乗って」

◇24日 巨人2−3中日(東京ドーム)

 決勝点をもぎ取った陰にバントあり。そして涌井を助けたのもバント処理。連敗を止めたポイントは、4回の守りだった。連打で招いた無死一、二塁。巨人ベンチは赤星に犠打を命じた。ファウル、ボールからの3球目を一塁側に転がした。チャージしていた中田は、捕球から素早いターンで三塁へ。岸田を三塁で仕留めて、アウトカウントを増やした。

 「ピッチャーなんで、出過ぎるとヒッティングに切り替えられる。そういう指示も(ベンチから)出ていたんじゃないかな。そんな中で、三塁を狙っていたんでその通りになってくれて良かったです」

 決められていたら、ヒットゾーンが広がる内野前進シフトで勝負をかけるか、1点覚悟で定位置にするかの選択を迫られていた。一、二塁をキープし、涌井は門脇(左飛)、オコエ(投ゴロ)と冷静に打ち取ってピンチを脱した。

 送りバントは決まって当たり前。僕も含め、多くの人はそう思っている。実際、今季の中日の成功率8割6分2厘(企図29、成功25)。8割はないと、アウトひとつを差し出す作戦の意味がない。ところが巨人はリーグワーストの5割8分1厘(企図31、成功18)。中でも中日は5試合で4度も失敗(成功2)させており、そこにはバッテリーの配球と内野陣の強い圧力がある。

 対照的に中日の7回は、二塁打の木下の代走・尾田を山本が送った。フォースプレー(一、二塁)とタッチプレー(二塁)の違いはあれ、1死三塁をつくったことでギャンブルスタートの決断と捕手の悪送球へとつながった。

 中田本人は6回1死一、二塁からのけん制死を猛省していたが、そのマイナスより刺したプラスの方が大きかったと思う。対巨人戦の4度の失敗以外にも、バントファウルや空振りで強攻に切り替わったケースがある。中日内野陣が見せ続けている攻めの守り。同じアウトでも一塁ではなく三塁で取れたことで、涌井を奮い立たせたはずだ。