◇渋谷真コラム「龍の背に乗って」

◇27日 中日4―6広島(バンテリン)

 24試合かけて、勝率5割。急激に登った坂を、一気に滑り落ちた。勝っていたころの原動力も、負け始めた要因も与四球にある。しかし、この日に限れば反省点は他にもある。致命傷となった7、9回は2死走者なしからの3失点。そして先頭打者の出塁を6イニングも許している。それでもスコア上は接戦に持ち込めたのは、3本塁打もあるが広島の走者をけん制で1、送球で3度刺したからだ。

 うち2度は右翼・岡林に補殺の記録がついた。先に書いた6度の無死からの出塁で、広島が犠打を試みたのは1度だけ。それが6回の無死一、二塁だった。会沢はボール、ファウルとなり、3球目はバスター(ファウル)で追い込んだ。強攻に切り替え、浅い右飛。少し無謀に思えたが、二走・小園はタッチアップ。カリステへのワンバウンド送球で仕留め、2死一塁へと無失点で切り抜ける大きな併殺となった。

 2日前、岡林は東京都内で福留孝介さんから食事に誘われている。そこで言われたのが「(センターより)ライトの方がうまい」。チームもそう判断したから、1軍復帰後の岡林を右翼で起用している。ゴールデングラブ賞5度の名手の目にも、岡林の適性は右翼にあると映っていた。

 「だって追い方や投げる球の角度がライトの方が合っているから。あの補殺は走った方が悪いけど、あわてずにラインを崩さず投げられたからアウトにできたんです」

 言われた岡林も「球自体は抜けてしまったんですが、コントロールよくアウトにできて良かったです」と守備での貢献に少しだけ笑った。

 僕が福留さんの守備で最も印象に残っているのは、2007年7月15日の阪神戦(甲子園)。一、二塁からの右前打で、二走・赤星の生還には目もくれず、三塁を狙った一走を仕留めた。瞬時の判断力と強肩。美技の代償として右肘を故障し、大リーグ移籍前では最後の守備となった。同じ三塁での補殺とはいえ、この日の球の勢いは弱かった。ただ、岡林にも同じことをできる能力は備わっている。再び貯金するには守備力こそが生命線。そして竜の右翼は背番号1が映えるのだ。