元全日本F3ドライバーでレース事故に巻き込まれて車いす生活になった長屋宏和さん(44)がクラウドファンディングを使って自身を題材した絵本「ジーンズをはきたい」を出版することになった。絵本作家の保科琢音さんとタッグを組んでスタートさせたプロジェクトで自身は原案を手掛けた。すでに目標金額に達しており、今夏の完成を目指す。

 長屋さんは東京都出身で、2002年のF1日本GPの前座で開催された育成シリーズ「フォーミュラ・ドリーム」で大クラッシュ。頸髄(けいずい)を損傷し、首から下がまひする大けがを負った。現在も腕や手の動きが不自由で事故の後遺症で体温調整ができないという。

 その後は懸命なリハビリを経て04年に手だけでアクセル、ブレーキも操作できるマシンでゴーカートレースに参戦。さらに車いす生活者のためのファッションブランド「ピロレーシング」を立ち上げ、服飾界でも活躍している。最近では特製の電動車いすによる富士登山挑戦も話題になった。

 長屋さんは「絵本に挑戦する前から自分のやってきたことを子供たちに伝えたいと思っていた」。絵本は自身の体験談に基づいており、「車いすになって着たい服が着られない。ジーンズが好きなのにお尻の部分の生地や縫い合わせが硬くて履かせられない、と病院側に言われた。それをきっかけに自分が履けるジーンズを作って『ピロレーシング』というブランドを始めた」としている。

 クラウドファンディングは5月22日までで、ネクストゴールとして新たな目標額を設定し、来年にも子供たちを無料で招待する出版記念イベントの開催などを計画している。自身のレース活動については「以前は市販車レースのチーム監督もしたが、やはり自分も走りたい。その環境が見つかったらどんどんチャレンジしていきたい」と意欲十分だ。