有田焼、伊万里焼に代表されるように、やきものの産地として知られる佐賀県。県内各地には個性豊かな窯元が点在します。今回はそのふたつの産地に接する武雄の山間で、創作活動を続ける山本英樹さんの窯「閑古錐窯(かんこすいよう)」へご案内♪

「平成の魯山人」に師事した技能と作り手の感性が名品を生み出す

場所は佐賀県西方、緑濃い木々の間から巨岩、奇岩がそびえる黒髪山の山すそ。民家のない私道に入って奥へ奥へと分け入っていった先にぽつんと建つのが、「閑古錐窯」の工房兼ギャラリーです。

主は、「平成の魯山人」と評された故番浦史郎に師事したという山本英樹さん。修業を終えてからは地元に戻り、奥様と息子の創二郎さん夫婦の4人で、この窯を切り盛りしています。

主役にも脇役にもなれる変幻自在なうつわが、国内外の料理人を魅了

郷土の自然や風土から感性を得て創り上げた作品は、シンプルでありながら人を魅了する独特な個性があります。

ラインナップは小さいものは一輪挿し、大きいものは高さ1m超えのオブジェなどさまざまですが、一つひとつじっくり見ていると、わかってくることがあります。

それは技巧の多様さと技術の高さ。「粉引き」や「貫入(ひび模様)」、半乾きの素地に印判を当てて削り、化粧土を塗り込んで描く「三島手」など、同じ形のうつわでも手法を変えることでバリエーションをもたせています。

多くの場合、土もののうつわはもったりと少し厚めのものが多い印象ですが、たとえば茶碗など口当たりがよいよう薄めにして使い勝手のよさまで考えられています。

もうひとつ気づくことは、徹底したシンプルの追求と高級感です。装飾をおさえた引き算の美学が感じられ、独自に生み出した玄釉は使い込むほどに艶が出てシックな色合い。金彩、銀彩を多用しているのも特色です。

そして、どのうつわにもいえることは不思議な存在感。
うつわ単体のときは主役となって見る者をひきつけ、うつわとして使う場面では脇役に転じて料理や花を美しく引き立ててくれるのです。国内外を問わず、料理人を中心に熱心なファンがいることに納得です。

クラシックが流れる「藁の家」で、お気に入りのうつわ探しを

時間に余裕があれば、建物もじっくり見てみてください。じつはこの建物、藁でできています。分厚い藁のブロックを積み上げて土で固め、表面に漆喰を塗り整えたもの。窓枠や部屋の四隅など角の部分がまるく、つるんとした手ざわりが特徴的です。天然素材でできているため、心なしか中の空気も澄んでいるように感じられます。

ギャラリー入り口の土間には、飾り棚のほか、ソファセットを置いているので、ゆっくり時間をとって、好きなうつわを吟味しつつ、この居心地のよい空間を楽しんでみてはいかがですか? BGMのクラシックが心なごませてくれますよ。