作者・眞藤雅興氏の体調不良で休載していた「週刊少年ジャンプ(以下、WJ)」(集英社)連載の漫画『ルリドラゴン』(既刊1巻)が、3月4日発売のWJ2024年14号で連載再開された。同誌ではあまり見ないかわいい女の子の日常系漫画ということで連載開始とともに話題となり、2023年には「全国書店員が選んだおすすめコミック2023」第1位を獲得。先日公式エックスで投稿された「連載に関するお知らせ」は5万を超えるいいねが付き、トレンド1位にもなった。本稿では、そんなファン待望の復活を果たした話題作の魅力を紹介したい。

 本作は、ある日突然ツノが生えてしまった女子高生・青木瑠璃(ルリ)の日々を描いた日常系ファンタジー漫画。生えたツノについて母に訪ねると「あんた人と龍のハーフなのよ。父親が龍だから」といきなり衝撃の事実を明かされるルリ。だが、ひとまずツノ以外に体調の変化はないし、母も母で「普段通りでいいよ」というものだから「生えてしまったもんはしょうがない」といつも通り学校へ。しかし、彼女の体質は遺伝という形で確実に龍のそれへと変化していた…。

■人外ハーフなJK主人公・ルリがかわいい

 ルリは引きこもり気質で人付き合いに苦手意識を持っているちょっとだけ“陰キャ”気味な女の子。でも、苦手意識を持っているだけであって、人付き合い自体は苦手ではない。第1話からツノが生えて火まで吹けるようになってしまうルリだが、この体質の変化が表れたことをきっかけに、今まであまり関わることのなかったクラスメイトと交流を深めていく。となりの席の陽キャ女子・神代さんたちとスタバに行って勉強会&自撮りをしたり、龍に興味を持つ大勢の級友たちにツノを触らせてあげたり。自身に起きた変化を少しづつ受け入れながら表情豊かに学校生活を送るルリがとにかくかわいいのだ。

■謎だらけな“龍”という存在

 本作を読んでいて感じたことのひとつに、登場する大人たちの「龍に対する妙な落ち着き」がある。ルリの母は当然だが、彼女の母(ルリの祖母)もツノを見ても「えらい立派なん生えたなぁ」と感心するだけだし、ルリのクラスの担任も「普通とは違う特性を持った人がいることなんて人間社会でもよくあること」とルリを気遣ってくれる。さらに、ルリの体を診てくれる病院の先生は龍に関する見聞があるという。

 頼れる大人がいるのは読者としても安心感があるが、同時に「この世界の龍って知っている人にとっては意外と身近な存在だったり?」「もしかして、学校にはルリ以外に人外とのハーフがいた?」など色々考えてしまう。コミックス1巻の時点では龍について語られる描写が少ないため、今後の展開で世界観が明らかになっていくのにも期待したい。

■眞藤氏のこだわりを感じる“口”

 これは余談なのだが、本作はルリが笑顔や食事で口を開けている瞬間が多々あり、その多くが歯並びや舌まで口中を細かに描いている。中でもルリが病院の先生に喉を診てもらうため口を大きく開けるシーン(コミックス1巻第2話)は「あー」という声が聞こえてきそうなほど。当時のSNSでも読者から「お口の描き方ど好み」「口の絵に対する執念がすごい」などの声が散見されており、間違いなく本作の見どころの一つだと思う。

■新たな体質“放電”が発現 ルリの明日はどっちだ

 コミックス1巻のラストでは、ルリが体から電気を放って終わったのだが、WJ14号掲載の第7話で母はこの体質に心当たりがある様子。そして、ルリは龍の体質を恐れたクラスメイトから非情な言葉をかけられてしまう…。

 本作はWEBサイト「少年ジャンプ+」にて、第1〜3話が無料試し読み可能となっており、YouTubeチャンネル「ジャンプチャンネル」ではボイスコミック版も公開中。人気声優の小見川千明がルリを、名塚佳織が母を担当しており、アニメのように楽しめる。さらに、同チャンネルでは本作の前身である読み切り版『ルリドラゴン』(「少年ジャンプGIGA」2020年12月28日発売号掲載)もボイスコミックで観られる。連載版とは少し違った展開になっているのでチェックしてみてほしい。

 『ルリドラゴン』は、ジャンプコミックス1巻が発売中。WJ14号以降は、WJ18号まで毎週掲載。以降は「ジャンプ+」に移行し、隔号連載となる。