食の都・パリを牽引する名門ホテルのメインダイニングは、受け継がれてきた技術と革新的な感性を備えたスターシェフたちの“作品”に魅せられる場所。
その優美なガストロノミーを皮切りに、今行くべきグルマンの旅を案内する。
4回に渡り、名門ホテルのメインダイニングとそのホテルをご紹介。
ビジュアルを楽しませる発想力
◆EPICURE(エピキュール)
シェフの入れ替わりが少なくないレストラン業界で、エリック・フレション氏は25年もの間、ル・ブリストル・パリの総料理長を務め、2009年からは3ツ星を維持している。
「ここは自分の進化を見せられる場所」と彼は穏やかな笑みで、変わらない情熱を見せる。
その思いが込められた一皿が、プレートにキャビア缶がそのまま鎮座する前菜。キャビアをすくうと下にハドック(コダラ)で風味づけをしたジャガイモのムースが現れ、「いっけん、何事もないように見せる」というサプライズに心躍る。
また、主菜の肉厚のサーモンは44度の低温で約20分かけて火を入れふっくらとした食感を出し、春の庭のような景色を添えて供される。
「塩やバター、フレッシュハーブから肉にいたるまで、食材に対して真摯な生産者の存在があってこそ、感動を与える料理が生まれる」とシェフ。
誠実さに溢れた料理に、瀟洒な中庭に面したクラシカルな店内、トップレベルのホスピタリティが加わり、“フレションの世界”をいっそう華やかに彩る。
デセールは2023年に製菓長に就任した田中優パティスリーシェフが手がける。バニラビーンズに見立てたデセールなど、斬新なアイディアがレストラン「エピキュール」の未来へと繫がっていく。
Élic Frechon(エリック・フレション)
フランス国家最優秀職人章(MOF)を獲得。1999年よりル・ブリストル・パリで料理長を務める。2009年にミシュラン3ツ星に認定。
EPICURE(エピキュール)
所在地 112 rue du Faubourg Saint-Honoré 75008 Paris
電話番号 01 53 43 43 40
営業時間 7:30〜10:30、12:00〜13:30、19:30〜21:30
定休日 日・月曜(朝食は無休)
https://www.oetkercollection.com/hotels/le-bristol-paris/restaurants-bar/epicure/
チャップリンが愛したパラス
◆Le Bristol Paris(ル・ブリストル・パリ)
高級ブランドが集まるパリ8区に佇むル・ブリストル・パリは最初にパラス認定(5ツ星より上の格付け)されたホテル。
1925年の創業当時からパリの文化の拠点として人気を博し、チャーリー・チャップリンを始めとした著名人たちに愛されてきた。
改装を重ね2018年に現在のスタイルに。客室はひとり旅向けのスーペリアルームから300メートル近くあるタウンハウスのようなスイートルームまで様々なタイプがある。
部屋によってはルイ16世時代の家具が配されるなど歴史を随所に感じることができる。
また、街のギャラリーとコラボ企画を行っており、館内に作品をディスプレイするなど文化の発信地としての姿勢は健在。訪れるたびに刺激がもらえる。
Le Bristol Paris(ル・ブリストル・パリ)
所在地 112 rue du Faubourg Saint-honoré 75008 Paris
電話番号 01 53 43 43 00
客室数 190室
料金(1室)2,790ユーロ〜
https://www.oetkercollection.com/hotels/le-bristol-paris/
文=梅崎奈津子、伊藤 文
撮影=小野祐次
コーディネート=田中敦子