北朝鮮の穀物価格の上昇が止まらない。デイリーNKが、北朝鮮国内の情報筋を通じて行っている物価調査で、穀物価格の上昇が続いていることがわかった。

先月28日のコメ1キロの価格は、平壌5500北朝鮮ウォン、新義州(シニジュ)5600北朝鮮ウォン、恵山(ヘサン)6300北朝鮮ウォンで、前前週比でそれぞれ2.8%、3.7%、3.28%上昇した。(1000北朝鮮ウォンは約18円)

トウモロコシ1キロの価格は、平壌3100北朝鮮ウォン、新義州3140北朝鮮ウォンで、前前週比で6.9%、7.9%上昇した。恵山では3500北朝鮮ウォンと、物価調査開始以降で最も高かった昨年9月に並んだ。

ちなみに昨年同期の3都市のコメの平均価格は5766北朝鮮ウォン、トウモロコシは2933北朝鮮ウォンだった。前年の2022年の不作の影響で、穀物価格が例年より高くなったのだが、2023年は豊作だったと伝えられているにもかかわらず、穀物価格はむしろ上昇した。

国内は豊作で、中国からコメ、ロシアから小麦を買い付けたことで、北朝鮮の穀物価格は安定するとの予想が示されていたが、コロナで国境が閉鎖され、輸入が途絶えていた時期より高くなってしまった。

これについて慈江道(チャガンド)の情報筋は、「物量そのものが不足しており、市場にはコメがあまり出回っていない」と述べた。気候的に稲作が難しい慈江道では、消費されるコメのほとんどが他の地域から輸送されるが、どうやら物流にネックがあるようだ。その原因は、燃油高だ。

ドル高によるガソリン輸入量の減少、個人によるガソリン販売への取り締まり、田起こしなど農繁期の需要急増により、ガソリン価格が高騰している。先月28日の時点で、平壌でのガソリン1キロの価格は1万4200北朝鮮ウォンで、前前週比で23.48%も上昇した。軽油に至っては44.44%も高騰した。

これに伴い、運行を減らすトラックが増え、穀物の物流が滞っているようなのだ。

なお、市場に代わって穀物販売の主導を任されていたはずの国営米屋こと「糧穀販売所」だが、情報筋はこれに言及していない。詳細は不明だが、商品が入荷しないため、開店休業状態であることが考えられる。

市場に奪われていた穀物流通の主導権を国が取り戻すことで、穀物価格の安定を図るという金正恩政権の政策だが、価格が上昇していることを見ると、さほど順調に進んでいない状況が窺える。「見えざる手」によって形成される穀物価格を、人為的に操作するのは、金正恩総書記とて容易ではないようだ。

ちなみに、北朝鮮の穀物価格は、コメの収穫が終わる11月に最も安くなり、前年の備蓄が減って麦の収穫が始まる4月から6月が最も高くなるというサイクルを繰り返している。