主演は前田敦子、共演は菊池風磨。そして趣里、千葉雄大、オカモトレイジも出演──。3月15日、Netflixで映画「もっと超越した所へ。」の配信が始まった。2022年の劇場公開当時は豪華なキャスティングが話題になった。これほどの顔ぶれが揃った理由の一つに、2015年に初演された傑作舞台の映画化であり、その脚本と演出を担当したのが根本宗子だったことが挙げられるだろう。

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 出演した前田敦子や趣里は、もともと根本のファンを公言していた。担当記者が言う。

「根本さんは、月刊『根本宗子』という劇団を主宰しています。ただ劇団と言っても、劇団員が在籍しているわけではなく、公演のたびに俳優を集めるというスタイルでしう。『もっと超越した所へ。』はダメ男を引き寄せる女性たちの恋愛模様を描き、評判となりました。この戯曲を元に根本さんは映画版の脚本も執筆したのです」

 前田敦子は「ダメ恋愛体質」のデザイナーを演じ、その彼氏でヒモ男を菊池風磨、元子役のバラエティタレントを趣里が担当、2022年10月に公開された。さらに映画版の脚本を元に小説を執筆し、こちらは徳間書店から刊行された。

 カリスマ的人気と形容しても大げさではないが、まだまだ大多数の人々には知られていないと言っていいだろう。だがコアな演劇ファンは以前から注目していたし、いよいよブレイク間近だと評判になっている。演劇関係者が言う。

「根本さんは1989年10月生まれの34歳。彼女の母親が中村勘三郎さんの奥さんと親友という縁があり、3歳ぐらいの頃から歌舞伎を見ていたそうです。ただ、根本さんは里谷多英選手に憧れ、モーグルの選手を目指していました。かなりの腕前だったそうですが、中学校1年生の時に学校のリレーで転倒、外傷性大腿骨頭壊死症という重症を負いました。手術を受けたものの、6年間は車いすの生活を余儀なくされたのです」

“背水の陣”で手応え

 2018年6月、劇団「大人計画」を主宰する松尾スズキが脚本と演出を担当し、勘三郎が主演の舞台「ニンゲン御破算」が上演された。根本は勘三郎から招待を受け、劇場に足を運んだことで人生が大きく動き出した。

 高校に進むと、生の舞台だけで年間120本を見たという。卒業後、ENBUゼミナールの演劇コースに進んだ。ちなみに、同ゼミのシネマプロジェクトで映画「カメラを止めるな!」が生まれたのはよく知られている。

 熱意は誰にも負けなかったが、足の持病で動作に制限があり、どんな役でも演じるというわけにはいかない。そのため自分で脚本を書くと決心。2009年5月に劇団・月刊「根本宗子」の実験公演を行い、アルバイトをしながら自作を上演する日々が続いた。

 しばらくすると、アルバイトを可能な限り減らし、演劇に集中する“背水の陣”を敷く。挑戦すると手応えを感じた。徐々に知名度が増していき、“期待の新人”という評価も定まった。2016年の「夏果て幸せの果て」から21年の「もっとも大いなる愛へ」までの4作品が岸田國士戯曲賞の最終候補に選出されたが、惜しくも落選している。

ブレイクは確実

「21年には劇作家、演出家として専念することを発表し、俳優は“引退”したことになりました。ところが今年は演劇活動15周年の節目となり、1年間だけの俳優復帰を決断したのです。1月に『〜15年目で本気のバー公演もっかいやります!〜新作『腑に落とす。』』を上演し、自身も舞台の上に立ちました。役者復活というトピックだけでなく、小日向文世さんの長男である小日向星一さんと共演という点でも話題になりました」(同・演劇関係者)

 テレビ業界などでは、根本がお笑い芸人からも高い支持を集めていることでも有名だという。例えば、お笑いコンビ、Aマッソの加納愛子はファンを公言しており、根本とテレビ番組で共演したり、雑誌で対談をしたりしている。

「加納さんも1月の『腑に落とす。』に駆け付け、周囲に『一緒に仕事をしたい』と話していました。実はプロジェクトが動いており、根本さんと加納さん、そして前田敦子さんも加わって、3人で舞台を上演する予定だと聞いています。とにかく今の根本さんに関しては、業界の評判はとてもいいです。今後、民放キー局のドラマや、予算のかかった大作映画の脚本なども依頼されるのは確実と言われています」(同・関係者)

デイリー新潮編集部