「王様のブランチ」に「アッコにおまかせ!」、「グッとラック!」など、花形番組を渡り歩き、2022年にTBSを退社した国山ハセン氏。当初は円満退社を強調していたものの、最近は古巣批判で注目を集めており……。【冨士海ネコ/ライター】

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 女子アナの承認欲求と自己評価の高さは相当だが、男性アナもなかなかのものである。今まで元フジテレビの笠井信輔アナの自意識がダントツと思っていたが、彼に並ぶくらい自己評価の高い逸材がいた。元TBSアナの国山ハセン氏だ。

「王様のブランチ」に「アッコにおまかせ!」、「グッとラック!」など、花形番組を渡り歩いてきた国山さんだが、2022年に退社。フリーアナではなくPIVOT株式会社の映像プロデューサーに転身し、タレント活動も並行して行っている。以前は円満退社を強調していたが、進行役を務めるABEMA Primeの動画内で「優秀でもやる気のない先輩と仕事をしたくない」から退社したと発言して話題になった。

 動画を見ると、議論を盛り上げるためのサービストークといえないこともないのだが、古巣批判ともとれる内容には疑問の声も上がっている。昨年出演した「ぽかぽか」でも、強気な発言だけが切り取られてネットニュースになるが、円満退社なのだと弁明していた国山さんはどこへ行ってしまったのか。「突然ですが占ってもいいですか?」に出演した時は、「グッとラック!」終了に落胆し、会社に行かなくなったりしたとも明かしていた。会社の方針に不満があるからといって出社しなくなる人が、「やる気のない先輩」をそこまで糾弾できるのかと反感を買ってしまっている。

 思えば国山さんは局アナ時代も、「他人のやる気」にうるさい人だった。有名なのが「ポテトサラダ」論争だ。

 とある女性がスーパーで総菜のポテトサラダを買ったところ、見知らぬ年配の男性から「ポテトサラダくらい作ったらどうだ」と言われたという話をニュースで取り上げた際、国山さんは「手作りのポテサラに愛を感じる」「手間暇かけるのは、愛と感じますでしょ?」と発言して冷ややかな目を向けられていた。

 番組アシスタントの若林有子アナウンサーからも、「若林は料理できるの? できないならモテないよ」と国山さんに言われたと暴露。どこかモラハラ臭のする国山さんの発言には、女性視聴者を中心に批判が寄せられていた。

成功したからこそ色濃くなったように見える持論へのこだわり 結果よりも苦労を重んじたがるソフト老害の兆し

 国山さんの言う「優秀だがやる気はない」先輩が誰かは分からない。まあ確かに、漢字を読み間違えても遅刻してもヘラヘラしている女子アナが、次々に玉の輿(こし)で寿退社していくのを見ていたら嫌味の一つも言いたくはなるだろう。

 飄々(ひょうひょう)として見えるが、ものすごく仕事熱心な安住紳一郎アナウンサーではないことは確かなように思うが、ただその安住アナが国山さんを指して「どうも面白くない、ユーモアのセンスが今ひとつ」とラジオで言っていたことがあった。「仕事はしっかりするんだけど、あんまり面白くない」後輩を心配して、国山さんの同期の熊崎風斗アナとともに川柳の教室に連れて行ったという。結局は知識ばかり身に付けて、全員理屈っぽくなって帰ってきたと、自虐含みの笑い話にして締めていた。

 国山さんは退社理由に、「原稿読みの枠からはみ出るのはあまり許されない」という葛藤を挙げていたが、仕事を持つ女性も多く見ている情報番組で、モラハラチックな持論を振りかざされては困るということを理解していたのだろうか。

 本人がどれだけ「自分は優秀」と思っていようと、その振る舞いは「無能」に映る。あまり意味がないランキングではあるが、在局時代の国山さんは「好きな男性アナランキング」のベスト10にも入っていない。

 けれども国山さん本人は、自分のやる気を認めてくれない、自分が正しく評価されないのは職場のせいだと恨みつらみをためていたのではないか。その頑固さというか、自分は正しくて周りが間違っているのだという思い込みの強さや頭でっかちさを、安住アナは心配していたように思うのだ。

 料理は味よりも手間暇をかけたかどうかが大事、特に女性は。そうした国山さんの苦労信仰とも呼べる主張は、視聴者にどう思われようと、やる気のあるアナウンサーの言葉は高く評価されるべきという持論と根っこは同じだ。結果よりも過程。長時間労働を厭わない態度こそが会社員のあるべき姿という、昭和世代の老害感覚そのものである。

 さらに厄介なのは、ヒラ社員だったアナウンサー時代と違い、「プロデューサー」という立場を得てしまったことだろう。いっぱしの肩書きを持ってしまったことによって、やはり自分は優秀で正しいから成功したのだという意識に拍車がかかったように見えるのだ。

成功自慢に見え隠れする古巣へのわだかまりと上昇志向 果ては国政進出か?

 先月「酒のツマミになる話」にゲストで出たときは、「パリピ」を自認し、西麻布や六本木で飲み歩いていると話していた国山さん。経営者とも飲む機会があるそうで、銀座で「1本7万円のランボルギーニのシャンパンを入れてもらった」とうれしそうだった。PIVOTの資産運用チャンネルや教育チャンネルの再生回数も順調に伸びており、自分の言葉で自由に話せる場が世間に受け入れられているという手応えもあるのだろう。港区の店や高いシャンパンや100万回再生といった分かりやすい成功の指標を得て、自分を正しく評価してくれなかった古巣ややる気のない優秀な先輩に、「どうだすごいだろう」と見せつけてやりたい気持ちも見え隠れする。

 とはいえ、会社員は結果が全て。炎上狙いなら別に構わないが、世間を逆撫でする発言を続けていては、視聴者は離れていく。やる気を持って頑張っているかどうかは、本人ではなくお金を払う側が判断するということだ。そこを読み違えたままでは、とても「優秀」なビジネスマンとはいえないだろう。

 手間暇かけることを自分だけでなく他人にも求め、それが正しい結果に結びつくと信じている国山さん、このままだと再び炎上する気がしてならない。

 もともとアナウンサーに強い興味があったわけではなく、母親の憧れていた職業だったからTBSを受験したという。本当に欲しかったのは、自尊心を満たし、何を言ってもちやほやしてもらえる肩書きと影響力だったのだろう。あと数年後、TBSの大先輩・小渕優子議員あたりと握手して国政に出ていても驚かない。ただ「グッドラック!」と、やる気のない目で見守りたい。

冨士海ネコ(ライター)

デイリー新潮編集部