長谷川博己(47)主演の日曜劇場「アンチヒーロー」(TBS)が快調だ。初回の視聴率は11・5%の二桁発進で、第2話は12・8%とさらに数字を上げた(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯:以下同)。早くも昨年の日曜劇場のヒット作「VAVANT」を超えるかもしれないという声が聞こえてきた。

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 ちなみに、昨年7月期に放送された「VIVANT」の視聴率は、初回が11・5%、第2話が11・9%。「アンチヒーロー」は、すでにそれを上回っている。もっとも、「VAVANT」は最終回で19・6%という高視聴率を叩き出した。民放プロデューサーは言う。

「『アンチヒーロー』は久しぶりに最高視聴率20%を超える作品になるかもしれません」

「VIVANT」も果たせなかった20%超を実現できるのだろうか。日曜劇場での20%超は、2021年4月期の「ドラゴン桜」第2シリーズの最終話(20・4%)以来となる。

「『ドラゴン桜2』も『VIVANT』も、演出は福澤克雄さんでした。彼の名前こそありませんが、『アンチヒーロー』のスタッフはプロデューサーの飯田和孝さんを筆頭に、いわゆる“福澤組”の面々です。脚本の山本奈奈さんも『VIVANT』の第3、6、9話と最終回で共同執筆に加わっており、福澤組と言っていいでしょう。今回が地上波連ドラでは初のメインライターを務めます」

 福澤組といえば、同じく日曜劇場の「半沢直樹」や「下町ロケット」、「陸王」など、骨太な作品で知られる。

「『アンチヒーロー』の初回冒頭、殺人犯をも無罪にしてしまう弁護士・明墨(あきずみ)正樹(長谷川博己)が面会室で被疑者(岩田剛典)に問いただしたシーンは、かなり骨太でした」

盛り上がる“考察”

明墨:人、殺したんですか? もういちど質問します。あなたは人を殺しましたか?……質問を変えましょう。殺人犯として生きるということは、どういうことだと思いますか? 人殺し、生きる価値なし、人間のくず、死んで償え……有罪が確定した瞬間、こんな言葉があなたに浴びせられます。見ず知らずの他人が、何千何万というナイフであなたの心を平然と刺していくんです。(中略)無論、あなたが真摯に罪と向き合い、更正したと判断されれば、刑を終えることはできます。……法律上は。でも、それはあなたが罪から解放されたわけではありません。過ちを犯してもやり直せる、日本はそんな優しい国、とでもお思いですか?

「加えて、“考察”が好きな視聴者のために謎の伏線をどんどん張っていく手法は、まさに福澤組です。明墨弁護士の娘かと思われたものの実は児童養護施設に暮らしているらしい紗耶(近藤華)、ときおり映し出される謎の囚人(緒形直人)、さらに、第2話は明墨が墓参りをするシーンで終わりました。洋式の墓には、6年前に亡くなったREIKO MOMOSEの名が刻まれ、明墨はそこに花を添えて涙する……。SNSでは早速、考察が盛り上がっています」

「アンチヒーロー」は運も味方しているという。

「今の日本には、物価高への対応をはじめ何もできない政府に対する庶民の“アンチ感”が漂っています。そこに自民党の国会議員による裏金事件が加わり、権力者に対する不信感が高まった。今年1月期に話題となった金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS)は、コンプライアンスだらけの世の中に異を唱えたことで喝采を浴びました。『アンチヒーロー』では、明墨弁護士が単純な正義に異を唱え、有罪率99・9%の壁を破って真犯人だと思われる被疑者の一審無罪を勝ち取った。ここで視聴者が喝采しているのは、権力へのアンチ感が味方していると言っていいでしょう」

 さらに、主演の長谷川博己の起用もハマった。

意外に多いリーガルドラマ

「2017年の映画『シン・ゴジラ』で日本アカデミー賞・優秀主演俳優賞を受賞したNo.1俳優の1人ですが、実は連ドラの主演は20年の大河『麒麟がくる』(NHK)以来。日曜劇場での主演は、17年の『小さな巨人』以来、7年ぶりとなります。ロス状態のところに、こうした重厚な演技ですから、喜んだ長谷川ファンも多いでしょう」

 ちなみに、「小さな巨人」は監修が福田氏でプロデューサーが飯田氏だった。よく知る長谷川を敢えて起用したのにも理由がある。

「11年10月期に放送され最高視聴率40・0%を記録した『家政婦のミタ』(日本テレビ)は松嶋菜々子の主演作ですが、ドラマの中心となった一家の父親役は長谷川でした。また、平均視聴率21・4%を記録した18年後期の朝ドラ『まんぷく』(NHK)でヒロインの夫役を演じたのも彼でした。長谷川は、今、最も数字を持っている俳優の一人なんです」

 さらに、春ドラマにリーガルものが多いことも味方しているという。

「4月1日にスタートした朝ドラ『虎に翼』(NHK)は、ヒロインを演じる伊藤沙莉が女性初の弁護士・裁判官・裁判所長を目指す物語。戦前の民法では“女性は無能力者”という法律用語や法廷シーンも、『アンチヒーロー』にとってはいい露払いになりました。石原さとみ主演の『Destiny』(テレビ朝日)では彼女が権力側の検事を演じ、女子高生が弁護士になる『JKと六法全書』(テレ朝)なんてのもあり、リーガルドラマが多い中で『アンチヒーロー』は異彩を放つことに成功しています。このままいけば、最高視聴率20%超えもあるかもしれません」

デイリー新潮編集部