春ドラマの視聴率争いは、「アンチヒーロー」(TBS)と「Believe―君に架ける橋―」(テレビ朝日)のトップ争いが続いている。ところが、両者には決定的な違いがあるという。(視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区)

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 長谷川博己(47)主演の「アンチヒーロー」は、初回(4月14日)の世帯視聴率が11・5%でスタートした。以後、第2話が12・8%、第3話が10・4%、5月に入り第4話で9・2%と一桁に。だが、第5話で10・1%と持ち直した。

 一方、木村拓哉(51)主演の「Believe」は、初回(4月25日)の世帯視聴率が11・7%、第2話が10・1%、そして5月9日の第3話で9・6%と一桁に。

 どちらも抜きつ抜かれつという感じだが、「Believe」のほうが一桁に落ちるのは早かった。民放プロデューサーは言う。

「内容的には決して悪くありません。かつての名作映画『逃亡者』を彷彿させる無実の罪を背負った逃走劇で、第3話からはいよいよ脱獄犯となったキムタクのドラマとなり、SNS上の評判も上々です。共演者は天海祐希や上川隆也、斎藤工らの主演クラスに加え、竹内涼真 はこれまで見たことのなかったキャラで熱演しています」

 だが、世帯視聴率は早くも一桁に下がった。

コアでは横並び4位

「問題は主要スポンサーの売上に直結するため営業が重視するコア層(13〜49歳)の視聴率です。5月9日、『Believe』のコア視聴率は2・2%でした。同時間帯で比べると、『秘密のケンミンSHOW極』(日本テレビ/読売テレビ制作)は3・2%、『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』(TBS)は3・0%、『ミュージックジェネレーション』(フジテレビ)は3・0%。各局が3%台で健闘する中、『Believe』は2%台で4局中の最下位です」

 つまり、若者が見ていないということか。

「キムタクも今や51歳、彼自身がコア層ではなくなりました。営業やスポンサーが求めていない3層(M3層=50歳以上の男性、F3層=50歳以上の女性)の仲間入りで、ドラマも3層ソフトということです。そもそもテレ朝の人気番組は3層ソフトが非常に多い。『羽鳥慎一モーニングショー』や『報道ステーション』、人気ドラマシリーズの『相棒』なども主な視聴者は3層のため、世帯や個人の数字は取れても営業は大丈夫なのかと、他局ながら心配になるほどです」

 もっとも、「アンチヒーロー」の長谷川だって47歳、かろうじて2層(35〜49歳)ではあるものの、それほど若いわけではない。

「『アンチヒーロー』のコア視聴率は初回4・5%、その後、落ちてきてはいるものの5月12日は2・7%と今も3%に近い数字を取っています。一方の『Believe』は、初回2・8%、第2話2・1%と、3%に達したことはありません」

 両者の違いはどこにあるのだろう。

「VIVANT」の二の舞も

「どちらも作品はしっかりしていると思います。ただし、文学座で演技を学んだ長谷川はこれから俳優として味が出てくるでしょうが、元アイドルのキムタクは“何をやってもキムタク”と言われるように、主要な視聴者は彼のファンということにならざるをえない。そのためテレ朝としては、開局65周年記念作品が一桁では格好がつきませんし、豪華なキャストを立てることで他の役者でも視聴者を獲得したいという思惑があったのでしょう」

 ただし、春ドラマのコア視聴率は総じてよくないという。

「直近で2%を越えたのは『アンチヒーロー』と『Believe』、生見愛瑠・主演の『くるり〜誰が私と恋をした?〜』(TBS)、そして山下智久・主演の『ブルーモーメント』(フジ)しかありません。1月期は、内容が子供だましと蔑まれた櫻井翔の『新空港占拠』(日テレ)でさえコアは初回4・3%、最終回4・1%でした。西島秀俊と芦田愛菜の日曜劇場『さよならマエストロ〜父と私のアパッシオナート〜』(TBS)も最終回3・0%と悪くありませんでした。“ドラマはコア層の数字が取れる”と言われたものですが……」

 もっとも、配信で稼ぐという手もある。TVerの見逃し配信数のトップは「Believe」だという。

「それは豪華出演陣の賜物かもしれません。ただし、昨年、莫大な制作費が話題となった日曜劇場『VIVANT』(TBS)は、最終的に高視聴率を記録したもののDVD売上や有料配信で稼ぐことができず、大赤字になったと言われています。このままでは『Believe』も同じ轍を踏みかねません。さらに、コア視聴率も稼げていないので、スタッフは頭を抱えているに違いありません」

デイリー新潮編集部