「あなたとコンビニとニッポン」なな茶×渡辺広明
全国5万8000店舗、年間159億人が買い物する“コンビニ超大国ニッポン”。老若男女、昼夜を問わずさまざまな人が訪れるコンビニは、その目的や利用方法も人によってさまざまだ。「コンビニとの付き合い方」を覗いた先に見えてくるものとは? コンビニジャーナリスト・渡辺広明氏が、ゲストを招きコンビニについて大いに語り合う──。
今回のゲストは、グラビアアイドルのなな茶氏。TikTokのフォロワー数は370万オーバーであり、SNSクリエイターとしても活躍中だ。そんな彼女のお気に入りチェーンは、渡辺氏の古巣であるローソンとのこと。足繁く通うようになったきっかけは、ローソンの巧みなSNS戦術と大きな関係があるようだ。
コンビニで生き残る「うまい棒」のすごさ
渡辺広明(以下、渡辺):なな茶さんは、昨年(2023年)に浜松市の観光大使「やらまいか大使」に就任されました。
なな茶:念願のやらまいか大使です! 渡辺さんの後輩になりますね。よろしくお願いします。
渡辺:ご自身のYouTubeチャンネルで就任報告をした際に語った「貧乏時代の話」がメディアでも取り上げられていましたが、かなり苦労したようですね。
なな茶:そうですね。幼い頃に父子家庭となってからは児童扶養手当や医療費の免除をしていただいてまして、本当に浜松市にはお世話になりっぱなしでした。
渡辺:家庭事情的に、コンビニを使う機会は少なかったのでしょうか。
なな茶:ほかの家庭の利用頻度はわかりませんが、たまに利用していましたよ。お父さんから「好きな物を買っていいよ」と100円をもらえたときは、コンビニで「うまい棒」(やおきん)を10本くらい買って、それを弟と分けて食べてました。
渡辺:コンビニに置いてあるうまい棒は種類が少なかったでしょう。基本はチーズ味とめんたい味じゃないかな?
なな茶:そうだったかも。でも、めんたい味が大好きだったので、当時は種類を気にしたことはなかったですね。チーズ味とめんたい味はメーカーが推してたんですか?
渡辺:単純に売れ筋商品だからです。棚が限られているコンビニで、すべての種類を置くことができません。だから、売れ筋商品を優先的に仕入れると、チーズ味とめんたい味になる。店舗によって余裕があれば、コーンポタージュ味などほかのフレーバーも置かれます。
なな茶:そう言えば、昔に比べて今のうまい棒は細くなりましたよね。価格も少し前(※2022年4月)に12円になっちゃいましたし。ちょっと寂しい…。
渡辺:長い不景気のなかでメーカーも頑張ってますから、12円でも買えることを喜ばないと。コンビニとしても、うまい棒で得られる利益は微々たるものですが、それでも置いているわけですから。この対談で何度も話してるけど、コンビニは1年間で7割の商品が入れ替わる激戦区です。そのなかで、20年以上も生き残り続けているうまい棒ってすごい商品なんですよ。
なな茶:たしかに!
渡辺:TikTokでたとえるなら、うまい棒は3000万フォロワーがいるような超人気TikTokerなんですよ。なな茶さんの370万フォロワーもとんでもないけど、うまい棒はそれをはるかに上回るんです。
なな茶:うまい棒、すごい…。
SNSの使い方が上手なローソン
渡辺:大人になった現在は、どのようにコンビニを利用していますか?
なな茶:食品、調味料、日用品にいたるまで、めちゃめちゃ利用してます! DNAに組み込まれているんじゃないかと思うレベルで通ってます。
渡辺:ヘビーユーザーでしたか。お気に入りのチェーンはありますか?
なな茶:ローソンです。
渡辺:ナチュラルローソンの方ですか? これまでの対談でも、ナチュラルローソンを挙げる女性が多かったんですよ。
なな茶:いえ、普通のローソンです。ナチュラルローソンは全体的に高いので…。リンスも1個1000円とかするんですよ? びっくりしちゃう。
渡辺:ローソンを好きになったきっかけは?
なな茶:SNSのイメージでしょうか。私の情報源はSNSが中心で、ローソンはTikTokでも新商品やアレンジレシピの紹介など、積極的に活用している印象が強いです。それで気になって、ローソンに足を運ぶ機会が増えていったと思います。
渡辺:ローソンは大手企業のなかでもいち早くTwitter(現X)の公式アカウントをつくって成功しました。情報を発信する同社のキャラクター「ローソンクルー♪あきこ」のフォロワー数は800万人超えで、国内の企業公式アカウントとしてはトップの数字です。
なな茶:「マチカフェ」のクーポンもよくお世話になっています。
渡辺:僕はTikTokの方はあまり詳しくないのですが、ローソンはTikTokの使い方も上手?
なな茶:見せ方がとても上手だと思います。「どうやったら再生数が伸びるか」を把握している印象を受けます。
渡辺:その影響を受けて、ローソンを利用する機会が増えたんですね。お気に入り商品は何でしょう。
なな茶:「白いたい焼き」が大好きで、頻繁に買っています。地下アイドル時代はお金が全然なくて、大盛カップ麺の「ごつ盛り」(東洋水産)など、コスパ重視だったんですけどね(笑)。
渡辺:稼ぐようになると、反動で散財しちゃいませんか。
なな茶:ブランド物を買い漁る的な反動ではなく、「今日はコンビニで2000円分を買って、好きなだけ食べて飲んじゃうぞー!」的なプチ贅沢はありますね。
渡辺:グラビアアイドルですから、体型維持を考えるとあまり頻繁にそのプチ贅沢はできませんね。
なな茶:そうなんですよ。私は太ると胸も大きくなるのですが、痩せても胸が小さくならない。これ以上、胸が大きくなるのはさすがに困るので…。
渡辺:失礼ですが、今は何カップでしょうか。
なな茶:Jカップです。Kカップにはなりたくない…。何が原因だろう? 白いたい焼きを食べ過ぎたせいかな?
渡辺:それはないでしょう(笑)。
これからは故郷の浜松に恩返ししていきたい
なな茶:あと、コンビニではよく傘も買いますよ。
渡辺:傘ですか!? 傘って頻繁に買う商品じゃないでしょう。
なな茶:すぐなくしちゃうんですよ。ChargeSPOTもよく利用しますが、いつも返却期間が過ぎて買取りになっちゃうし…。
渡辺:自分でモバイルバッテリーを所有してないんですか?
なな茶:そのモバイルバッテリーの充電を忘れちゃうんですよね。
渡辺:なな茶さんって、もしかしてズボラさんですか?
なな茶:否定できません。
渡辺:部屋も汚かったり…?
なな茶:掃除、大の苦手なんですよ。以前に住んでいた部屋は片付けることができず、最終的に業者に頼んで処分してもらいました。30万円かかりました…。
渡辺:インフルエンサーなんですから、そういう私生活の部分もちゃんとしないとダメじゃないですか。
なな茶:そうなんですよね…。
渡辺:では、私生活は掃除を頑張るとして、お仕事面の今後の目標は何でしょう。
なな茶:もともと芸能志望でこの業界に入ったので、TikTok以外の露出も増やしてファンの人をもっと増やしていきたいです。
渡辺:今のTikTokのフォロワー数は370万ですよね。ここからさらにファンを増やすって大変そうです。
なな茶:ありがたいことに、外で声をかけていただく機会が増えましたが、テレビやYouTubeなどのほかのメディアとは異なり、TikTokはファン化しづらいんですよ。
渡辺:そうなんですか?
なな茶:私が思うに、TikTokが得意とするのは「認知領域」なんです。わずか15秒のエンタメなので、その人を知ってもらうことを得意とする反面、人間性までは伝わりにくいツールです。一方、テレビやYouTubeなどは、トークも増えるし、内面や人間性を知ってもらうことができます。だから今後は、TikTokで認知を増やすだけでなく、別のSNSやメディアを通じて、私の内面を知ってもらってファンになってくれる人が増えたらうれしいなと考えています。
渡辺:すごく冷静に分析できているんですね。SNSのコンサルとかも増えそう。
なな茶:企業名は出せませんが、すでにコンサルタントとして複数の企業さんとお仕事させていただいています。動画がバズる理由は、タイミングなど複雑な要素があるので難しいのですが、個人的には打率1割でバズれば成功という世界です。直近ですと、お仕事させていただいた動画が3本連続で70万再生を突破しました。
渡辺:すごい! 僕のYouTubeチャンネル、まだ登録者数200人台なんですよ。ぜひアドバイスをいただきたい。
なな茶:何かの形でコラボできたらいいですね。コンビニ関係もおもしろそうですし、それこそ、やらまいか大使としても浜松を盛り上げたい。本当に行政にはお世話になったので、これからは浜松に恩返ししていけるように頑張っていきたいです。
なな茶(ななちゃ)
グラビアアイドル、SNSクリエイター。静岡県浜松市生まれ。10代からアイドル活動をはじめ、複数のグループ所属を経てグラビアアイドルに。SNSでの活動も積極的で、TikTokのフォロワー数は370万人(2024年1月現在)。2023年秋には、かねてより熱望していた故郷・浜松の観光大使「やらまいか大使」に就任している。Xアカウント(@nanaki_chiba)、TikTok(@nanacha_0211)
渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト、流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務など幅広く活動中。フジテレビ「FNN Live News α」レギュラーコメンテーター、TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。
デイリー新潮編集部