引退と解散が噂され

 大阪ミナミの中心地にあった2代目宅見組の本部事務所が民間企業に売却されて、この4月で1年になる。これを機に2代目宅見組の解散や入江禎・同組長の引退がささやかれたが、現状はどうなっているのかお伝えする。

 2021年2月、大阪地裁が使用差止めの仮処分を決定して以降、2代目宅見組本部事務所の売却交渉は本格化していったとされる。大阪屈指の繁華街の中心にある暴力団の本部事務所に手を出そうとする面々は限られているのだろうが、狭い世界の中で押したり引いたりのやり取りが繰り返されたのだろうか、契約交渉がまとまるまでに2年余を要したことになる。

「本部事務所が使用できない状況が続いたことに加え、入江組長自身が立ち上げたとされる3代目勝心連合が組織を脱退し、6代目山口組・3代目弘道会・野内組に移籍したこともあり、入江組長が引退して2代目宅見組を解散するのではないかと噂されてきました」

 と、担当記者。

池田組と行動を共に

「入江組長は6代目山口組在籍時、司忍組長のもとで執行部のメンバーとして組織運営に携わっていた時期がありました。その手腕を司組長は評価していただけに、入江組長が組織を離脱し、神戸山口組の立ち上げに参画したことについてはことのほか残念だと感じていたとされています。分裂状態が解決するまで司組長は引退せずというのが不文律になっていましたが、入江組長に思い入れがあったことから、神戸山口組の井上邦雄組長が白旗をあげなくても、入江組長が引退したり何らかの恭順の意を示したりすれば“ひとつの区切り”として司組長がトップの座を譲るのではないかとの見方もありました」(同)

 本部事務所の売却は、大きな動きの端緒となると見られていたわけだ。それから1年が経過し、現状はどうなっているのか。

「今のところ引退せず、池田組と行動を共にすると聞いています」

 と、竹垣悟氏(元山口組系義竜会会長で、現在はNPO法人「五仁會」を主宰)。

 入江組長は神戸山口組の副組長時代、池田組との「2社連合」締結に動いた中心人物だった。

前谷若頭の逮捕・起訴が

 入江組長は2社どころか絆會も含めた3社連合を目指していた時期がある。以前に神戸山口組が絆會の織田絆誠会長にヒットマンを向かわせたことなどで断絶していた関係を修復すべく動いていた。

 しかし、その動きが井上組長の逆鱗に触れてしまう。入江組長はこうした井上組長に嫌気がさして、神戸山口組を脱退したとされている。結果、池田組と絆會は運命共同体を標榜する一方、神戸山口組と絆會の間のわだかまりが消えることはなかった。入江組長と井上組長との間にも距離があるままなのは想像にかたくない。

「さまざまな問題をはらみつつも入江組長が引退を選ばなかったのは、池田組のナンバー2・前谷祐一郎若頭が殺人容疑で逮捕・起訴されたこととも関連があるのかもしれません」(同)

 前谷若頭とは、いわゆる「愛媛スタバ射殺事件」の容疑者。犯行の背景には池田組と6代目山口組との抗争があるという見方が強い。

 その犯行にどの程度、組織の意思があったかは不明にせよ、ナンバー2の逮捕は池田組にとってはダメージである。そうした友好組織のピンチに手を差し伸べようという意志があり、簡単に自分だけ身を引くわけにはいかない、と考えたのだろうか。その判断は結果として、山口組分裂問題の決着をより遠のかせる要因となるかもしれない。

デイリー新潮編集部