埼玉・川口市でクルド人男性が不同意性交容疑で逮捕された。女子中学生に性的暴行をした疑いである。実はこの男性、難民申請中だった。悲劇の主人公のはずの「難民」が他人を悲劇に追いやる、その実態とは。

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 報道等によると、3月7日に逮捕されたのはさいたま市に住むハスギュル・アッバス容疑者。トルコ国籍の20歳、解体工だという。

 事件があったのは1月13日のことだ。アッバスは都内の女子中学生とSNSで知り合い、複数人でドライブ。二人きりになった後、川口市内のコンビニの駐車場に停車し、車内で犯行に及んだ。行為の時間は約6分。粗暴極まりない事件である。

 川口市とその周辺でクルド系の住民と地元住民との間にあつれきが生じているのは周知の通り。

市議も「不安に思う市民が増えている」

 昨年は男女のもめごとでけがをしたクルド人男性が川口市立医療センターに運び込まれ、それを巡ってクルド人が100人ほど病院に集結。一時、救急搬送の受け入れが停止されるという大騒動が起きた。

「不安に思う市民が増えていると感じます」

 とは、川口市議の奥富精一氏。

「これまでも一部のクルド人が改造車で危険運転や違法駐車をしたり、あるいはけんかをしたりという事例が見られてきました」

 昨年6月には市議会で「一部外国人による犯罪の取り締まり強化を求める意見書」が採択されている。

「そこにきて今回の事件ですから、市民の不安がますます増したとしても不思議ではありません」

クルド人増加の背景事情

 クルド人とは、中東のトルコやイラン、イラク、シリアなどの国境地帯に住む「国を持たない民族」。川口は彼らが集住する地域として知られ、現在、2000人以上が暮らしている。

「彼らは難民申請をしているケースが少なくない」

 と言うのは、入管のさる関係者だ。

「トルコと日本は現在、短期滞在ならビザは必要ではありません。で、ノービザで入国し、滞在期限が切れるまでの間に難民申請を行うんです。すると、その審査期間中は強制送還が止められる。川口に来るクルド人の多くは、ある特定の地域の出身です。こうした仕組みで入った人たちが地元の親類縁者を呼びよせ、数が増えていったんです」

 今回の事件を起こしたアッバスも、先に日本に来た父を頼って幼少期に来日し、難民申請をした“移民2世”だという。

「実際、彼らが難民認定されることはほとんどありません。クルド人が母国で差別されているのは事実でしょう。が、難民条約が規定するように、自由が奪われたり、生活が著しく損なわれ、生命の危機が生じているかといえば、そこまでとは認められないことが多い。申請期間中に日本で稼いで帰国するか、あるいは子どもが小中学校に長期間通うなどすれば、在留特別許可をもらえるかもしれない。クルド人増加にはこうした背景事情があります」

 しかし、そうした入国経緯の者の中から凶悪犯が出れば、住民との摩擦が生じるのは当然のことだろう。

グレる2世

 この地域で長年、クルド人支援に携わってきた「在日クルド人と共に」理事の松澤秀延氏は、

「彼らも日本の社会に順応したいと思っていますが、日本側の拒否反応が強く、そこで絶望を感じてしまうことも多い」

 と分析するが、

「今回の事件もそうですが、2世の中には学校に行かず、いわゆる“グレて”しまうケースも少なくない。この問題を指摘するとすぐ差別と言われますが、まずは実態を正しく直視することが重要だと思います」(奥富市議)

 多様性尊重――そんな建前だけでは語れない現実が、この川口には横たわっているのである。

「週刊新潮」2024年4月4日号 掲載