4月9日、JR東日本が新たにネットバンク「JRE BANK」立ち上げを発表。開始は5月9日からだが、既にSNSでは“お得な特典”の活用法を巡って議論が沸騰中だ。そこで気になるのが普段から電車に親しむ「鉄オタ」の反応。“乗り鉄”にオススメ路線を聞いてみると――。

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4割引きの割引優待券を大盤振る舞い

 今回のリリースは4月1日付けで新たに社長に就任した、喜勢陽一社長の最初の定例会見で行われた。

 喜勢社長と言えば、副社長時代の2022年に「週刊文春」がアルハラ疑惑を報じたことで会社から処分を受けた過去がある。社内では「この一件で“出世コース”から脱落した」と見る向きもあったが、見事に復活を遂げた格好となる。

 そうした新社長の来歴と並び、驚きをもって受け止められたのが、「JRE BANK」口座の開設後、利用状況に応じて受けられる特典の手厚さだ。

 中でも特に注目を集めたのが、年間で最大10枚獲得ができる優待券。JR東日本営業路線内の片道運賃/片道料金が4割引きになる優れものだ。

 最大の「年間10枚獲得」の条件は、

・資産残高300万円以上
・口座をビューカード(JR東日本のクレジットカード)の利用代金の引き落としに使用
・口座を給料等の受け取りに使用

 上記の3つ。資産残高が50万円以上の場合は「年間6枚」となる。

50万円の預金で約180万円分の株主優待と同じ特典

「使用条件は株主優待券と同じはずなのですが、優待券は金券ショップで購入すると約4,000円します。年間10枚もらえるなら4万円相当ということになるので、確かに魅力的です」

 と解説するのは「乗り鉄」歴20年、“中堅”の鉄道オタク編集者だ。

「株主優待券を10枚もらうには1,000株の保有が必要で、今の株価で約300万円分になります。奇しくもJRE BANKの獲得条件と金額が並びますが、株価は値下がりのリスクがある。50万円でも6枚もらえるので口座開設の方が断然ハードルは低いですね」(中堅乗り鉄)

 50万円の預金で600株(=約180万円)の株主優待と同じ割引になるので、鉄道旅の好きな人にとってはメリットが大きいのである。

改悪されないかは要注視

 ただ、最近は高い還元率で利用者を囲い込み、目標を達成した後に還元率を低くする、という“戦略”も目立つ。

 3月には、「SBI証券×積み立てNISA×クレカ積み立て」で最も還元率が高いと評判だった、三井住友カードの「プラチナプリファード」の“改悪”が話題に。

 従来の「5万円の積み立てまで還元率5%」を「年間カード使用額500万円以上で還元率3%」となったことで、高い還元率に魅力を感じて年会費33,000円を受け入れてきたユーザーから大ブーイングが起こった。

 JRE BANKについても、特典の数々が将来にわたって継続されるかは注視が必要だろう。

まず薦めたいのは“復興支援”を兼ねた鉄道旅

 実際の「4割引優待券」の活用法を乗り鉄さんに聞いてみると。

「私なら北陸新幹線をオススメしますね。北陸応援割が4月26日に終了しますが、今後も復興支援という観点で定期的に北陸を訪れたい。魚も美味しいですしね。金沢はJR西日本管内なので割引対象外ですが、東京からだと上越妙高までなら北陸新幹線の片道料金9,440円が5,664円に。そこから金沢までは6,250円なので、往復で約7,500円の割引になります」(同)

 同じ“応援”の括りでは、2022年に豪雨災害から11年ぶりに全線再開通したJR只見線もオススメだそう。福島県の会津若松駅から新潟県の小出駅にかけて繋がる秘境路線で、知る人ぞ知る絶景スポットだ。

「東京駅からだと上越新幹線を使って3時間少しかかります。郡山経緯で片道9,440円なので約3,800円の割引になります。新潟側は東京駅からだと越後湯沢経由になりますが、こちらも片道約3,000円の割引に。会津宮下駅からアクセスできる第一只見川橋梁はぜひ一度訪れて欲しい」(同)

家族3人の帰省で往復4万円以上お得になる人も

「もう1つ、ローカル路線でオススメなのが、青森県の川部駅から秋田県の東能代駅を結ぶ五能線です。日本海を望む景色のいい観光路線なのですが、東京からは距離があります。こうした遠方の鉄道旅こそ4割引きのお得感を実感しやすい」(同)

 東京駅からは新青森経由だと約7,000円。秋田経由でも約7,500円の割引になる。

 もちろん、割引の恩恵を受けるのは旅行客だけではない。青森や秋田に実家がある人は、50万円の預金で条件を満たし、優待券を年間で6枚獲得できれば、家族3人の帰省で往復4万円以上の節約に。計算上では、預金50万円が年利換算で8.4〜9%にもなる。

「お得な特典も魅力ですが、将来的にはこうした経済圏が地方路線にまで広がって、不採算路線を維持する助けになってくれれば」(同)

 ローカル路線の廃線を目の当たりにしてきた乗り鉄さんは、最後にこう期待を込めるのであった。

デイリー新潮編集部