もはや岸田文雄政権は青息吐息。自民党は派閥の裏金事件で国民から総スカン状態なのに、日本維新の会が急速に接近している。

「安保政策における歩み寄りが端的な例ですね」

 と言うのは政治部デスク。

「国会が“政治とカネ”一色の中、3月6日に維新は経済安保情報にアクセスする民間人などに国が身辺調査を施す、セキュリティークリアランス制度に関する実務者協議を申し入れました。公明党はプライバシー侵害を理由に慎重な姿勢ですが、自民党と維新は15日に初会合を開きました」

 この時、維新は一貫して公明党が慎重だった次期戦闘機の第三国への輸出に関する協議も申し出ている。

「こちらは公明党の横やりで実現しませんでしたが、維新は立て続けにタカ派色をアピールしつつ自民党に擦り寄っています。さる公明党幹部は“ウチを外して自維連立を目指すつもりか”と、イライラを募らせていますよ」

「万博が“人質”に取られているから」

 もっとも維新は6月ともいう次期衆院選で野党第1党を目指すはず。自民党に手を差し伸べるのはなぜか。

 維新幹部がそっと明かす。

「来年4月の大阪・関西万博が“人質”に取られているからね。新年度予算案には反対したけど、800億円超という巨額の万博関連予算が含まれた令和5年度の補正予算案には賛成した。万博は資金難で、国がさらに援助してくれないと成功はない。ウチはあれが終わるまで、政府・与党に逆らえないんですわ」

 つまり、こんな思惑が。

「国からカネを引き出すには、連立入りして万博担当相のポストをもらうのが一番。今月24日の党大会では“2024年活動方針案”を採決するけど、そこでは次期衆院選の目標として“与党の過半数割れ”も掲げる予定。要は自公を厳しく追い込んで、維新を高く売り込むのが狙いやな」

 立民との野党第1党争いに興味はないそうで、「安保政策で公明との温度差を強調しているのも連立入りに向けた布石」とも。

小池都知事を迎え入れるプランも

 その一方、自民党関係者はこんな見方を披露する。

「維新の連立入りには、かなりの議席増が絶対条件ですが、万博関連のムダ遣いがたたって政党支持率は頭打ち。選挙の際は、自民党への批判票は立民に流れるでしょう。裏でわが党と手を握りつつ、他方で自分の票を増やすのはひきょうだし、かなり難しいんじゃないか」

 それでも維新はあくまで強気だ。別の幹部が言う。

「そこは“ウルトラC”を考えてある。小池百合子都知事をウチの共同代表に迎えて衆院選に出ていただき、関西以外の票を取りまとめる案がそれ。女性初の総理を目指す71歳の彼女にとって、次の衆院選は年齢的にも最後のチャンスでしょ。自公が過半数割れしてわれわれが連立入りした暁には、首班指名で小池さんを担ぐ。決して悪い話じゃないはずだ」

 当の小池氏の意向を、都政関係者はこう推し量る。

「都知事はいま、自民復党と維新入りをてんびんにかけている。ただ、自民党における後ろ盾だった二階俊博元幹事長が裏金事件で失速中。その点、維新なら党内にライバル視されるような総理候補はいませんし、自民党と違って選挙区は選び放題。現状では維新入りに傾いているのでは」

 都政の実績は皆無なのに。

「週刊新潮」2024年3月28日号 掲載