国民的な政治不信を招いた自民党派閥による裏金問題を発端として、政権内ではポスト岸田を念頭に置いた“総裁候補”たちの微妙なサヤ当てが始まっている。

 政治部デスクが解説する。

「きっかけは3月22日に行われた内閣府の有識者会議でした。再生可能エネルギー分野の規制緩和を議論する場でしたが、委員の一人が提出した資料に『国家電網公司』という中国国営企業のロゴマークがひそかに入っていたのです」

 その委員とは、自然エネルギー財団で事業局長を務める大林ミカという人物。彼女は昨年12月の会議でも、同じ中国企業のロゴが入った資料を提出していた。

「この会議は“脱原発”“再生エネルギー推進”が持論の河野太郎規制改革担当相の肝いりで始まりました。原発行政は経産省マターのため、河野氏は所管外で口を出せない。そこで“規制改革”を錦の御旗にコミットしようと考えたようです。大林氏はかつて反原発系の市民団体で幹部を務めており、委員就任も河野氏の推薦だったといいます」

河野氏をけん制する意図か

 エネルギー政策は国の安全保障に直結する最重要案件のひとつ。そのあり方を議論する場に外国企業との関係が疑われる人物が参加していたわけで、この“ロゴ問題”はすぐさまネット上で大騒ぎに。河野氏や内閣府は「チェック体制の不備」「事務的ミス」との弁明で乗り切ろうとしたが、これに高市早苗経済安保担当相がかみついた。

「高市氏は26日の会見で、“速やかに詳細な事実関係を調査し適切な対応をすることが重要だ”“関連政策の検討に当たっては他国から干渉されるようなことがあってはならない”と、大林氏や自然エネルギー財団と中国企業との関係に懸念を示しました。無論、高市氏の厳しい口調の背景には、次期総裁選で対抗馬になりそうな河野氏をけん制する意図もあったはず」

 河野氏は永田町で指折りの親中派と目されるが、今回の騒動には2年半前まで日中友好議員連盟で会長を務めた、同じ穴のムジナの林芳正官房長官も参戦した。

“次期総裁選を意識していることを隠さなくなった”

 自民党幹部が指摘する。

「“親中派”のレッテルが貼られる林さんだが、25日の会見では“エネルギーセキュリティーは国の安全保障の中核の一つであり、関連政策の検討に当たっては他国から干渉されない体制を確保しなければならない”と懸念を表明した。あの人はこれまで一匹オオカミのような立ち居振る舞いが多く、個々のテーマには関与しない印象が強かった。それだけに党内は“高市さん同様、いよいよ次期総裁選を意識していることを隠さなくなった”との話で持ち切りだよ」

 もっとも、河野氏の火消しも早かった。大林氏が25日に海外出張から帰国するや「いつもいろいろやっていただいてありがたいが経緯を説明してほしい。説明資料も欲しい」とし、後日本人から委員の辞任も引き出している。

 再び政治部デスクの解説。

「それでも林氏は28日の会見で“河野氏のもと、内閣府において中国政府から不当な影響を受けていなかったかなどの調査を行うというふうに承知をしている”と追い打ちをかけた。秋の総裁選に向けては、麻生太郎副総裁が推す、自分と同じ岸田派の上川陽子外相がポスト岸田の有力候補として急浮上中。あえて中国に厳しい姿勢を示すことで河野氏との差別化を図りつつ、党内保守派の支持を取り付けようと考えたんでしょう」

 河野氏の隠しきれない“中国愛”が、自民党総裁レースの号砲だなんて。

「週刊新潮」2024年4月11日号 掲載