首相の要請

 日本歯科医師会の会員が任意参加する政治団体「日本歯科医師連盟」。その利益誘導体質は、相も変わらずである。2004年、自民党旧橋本派への1億円ヤミ献金が明るみとなった汚職事件を機に、政治団体間の寄付を年上限5000万円とすることが定められた。しかし日歯連は、政治家の後援会へ他団体を迂回する手口で上限を超える額の献金を継続。15年には迂回献金事件として元会長らが逮捕されている。

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 常に「政治とカネ」の問題を惹き起こしてきた日歯連に、またしても疑惑が持ち上がっている。

 日歯連の元執行部メンバーが明かす。

「迂回献金事件のために、16年7月の参院選では、お抱えの候補を立てられませんでした。代わりに、当時の安倍晋三首相からの要請で、山田宏参院議員に日歯連の組織票30万票を回すことになった。山田議員は衆院議員や東京・杉並区の区長などを務めましたが、その時期は浪人中の身でした」

 16年参院選当時の日歯連会長は、現在の「日本歯科医師会」トップ、高橋英登会長。山田議員の杉並区長時代、高橋会長は「杉並区歯科医師会」の会長という立場だった。

悲願達成のため

 この縁もあり、日歯連は歯科医でもない山田議員を推すことを決めたという。

「当初、当選は覚束ないと見られていたのですが、日歯連が支援に回った結果、自民党比例区での当選に漕ぎつけた。22年の改選では正式に組織内候補に登用され、再選を果たしました」

 それに伴い、山田議員に“日歯連マネー”が流れ込むようになった。

「全国の歯科医からの会費をもとに、日歯連には年間10億円程度が集まります。そこから、山田議員が代表の“自由民主党東京都参議院比例区第二十二支部”に18年は750万円、19年1010万円、20年以降は毎年3000万円を寄付している。また、山田議員は毎月、ホテルで朝食勉強会を催しているのですが、日歯連はその都度10人分の会費として、20万円を支出しています」

 その額は、18年からの5年間で1億円をゆうに超えている。

「高橋会長時代の日歯連は、“国民皆歯科健診”の導入に向けた政界工作に着手しました。現在、1歳半から3歳までの幼児と小学生から高校生までの歯科健診が義務付けられている。その対象を全国民に拡大しようというのが、国民皆歯科健診です。山田議員は、その悲願達成のための尖兵の役割を担いました」

 最初に山田議員が国民皆歯科健診のキーワードで国会質問を行ったのは、日歯連からの寄付金が一気に増額した20年の3月に開催された参院予算委員会だった。

「週刊新潮」2024年5月2・9日号「MONEY」欄の有料版では、日歯連と山田議員の関係や政界の状況を詳報する。

「週刊新潮」2024年5月2・9日号 掲載