兄弟同然のパートナーと決別

 米大リーグ、ドジャースの大谷翔平(29)は3月25日(日本時間同26日)に、水原一平元通訳(39)の違法賭博問題の発覚後、初めて取材に応じた。日米のメディアが大挙押しかけた記者会見の席上、自身の違法賭博への関与は完全否定。口座から違法ブックメーカー(賭け屋)に送られていた金は、水原氏が盗用したものだと主張した。

 一方で水原氏が送金したプロセスは明らかにならなかった。大谷の「(水原氏に)ブックメーカーに送金してくれと頼んだことも、許可したこともないです」との言葉には、口座管理で水原氏に一定の権限を与えていたように受け止められるのだが……。

 ここまでの米メディアの報道による水原氏の発言と大谷の会見を総合すると、「兄弟」同然だった大谷と同氏の関係には不可解な点が浮かび上がる。

 大谷は疑惑発覚直後にインスタグラムで水原氏のフォローを解除した。続いて同氏の写真も削除する。既に大谷の代理人弁護士が「大規模な窃盗に遭ったことが判明し、問題を当局に引き渡した」と告発の声明を発表していた通り、大谷も会見では同様のことを述べた。昨季までのメジャーでの6年間、二人三脚で二刀流を完成させた水原氏と完全に決別した形で「信頼していた方の過ちというのを悲しくというかショック……」と失望感をにじませた。

 米報道では、水原氏にドジャースから支払われるはずだった年間給与は30万〜50万ドル(約4500万〜7500万円)だったとされた。これに対し、エンゼルス時代の球団からの給与は、本人が米スポーツ専門局ESPNのインタビューで8万5000ドル(約1300万円)と明かしている。その上で「生活苦だった。(大谷の)ライフスタイルに合わせようと無理をしていたからだ」と語り、「ギャンブル依存症」に至った動機に触れたのだった。

「エンゼルスからの報酬はやや高額にも思えますが、運転手や買い出しなど大谷の私生活もサポートしていたことを考慮すると、相場から大きくは外れていません。妥当なものでしょう」(米大手マネジメント会社の代理人)

周辺の金銭感覚に麻痺?

 同代理人はこう続ける。

「水原氏は違法賭博に手を出したのは2021年としています。それ以前に生活苦というのは違和感を覚えますね。食費などはシーズン中、基本的にほとんどかからないと思います。大谷のスポンサーから服が支給されたこともありました。衣食に不自由なく、独身だった上に、大谷が派手に遊ぶことはあり得ませんから“ライフスタイルに合わせようと……”という言葉は理解に苦しみます」

 理解できることがあるとすれば、グラウンド内外でけた違いの収入を得ていった大谷や、身近にいる他の大リーガーの暮らしぶりなどに金銭感覚を狂わせたことか。

「大谷は年俸6000万〜7000万円の最低保障でメジャー生活をスタートしましたが、昨季は3000万ドル(約45億円)まで跳ね上がっています。昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では調達に4000万円もするプライベートジェットで帰国しました。大谷が世界的なスター選手に上り詰める過程を一番近くで見ていた水原氏が、自分も、と賭け事にハマって『ギャンブル依存症』になっていったというなら、まだ分かりますが……」

 いずれにしても違法ブックメーカーは大谷と極めて近しい水原氏を、信用貸しのツケ払いという明らかに合法とは思えない手法で借金地獄へと転落させていったようだ。

渡米当初、報酬がなかった可能性

 そもそも水原氏は球団からとは別に、大谷から給与を得ていなかったのだろうか。水原氏はWBC開催中に選手たちと食事を共にし、その場で年俸を問われると「4000万円から7000万円の間」と答えたという話がある。仮に真実なら、エンゼルス球団支給分の1300万円以外に給与を得ていたことになる。

 水原氏が本当に言ったかどうか。そして、たとえ言ったとしても、大谷の会見では嘘の上塗りまでもが発覚しただけに、その信憑性は疑わしい。

「少なくとも渡米当初は大谷からの大きな報酬はなかった可能性があります。大谷は渡米前の日本ハム最終年の推定年俸は2億7000万円。それがエンゼルスでは激減しましたから、通訳を厚遇する余裕はまだなかったでしょう。その後スポンサー収入が増え、年俸が昨季ぐらいまで上がってくると、また違っていたかもしれませんが……」(前出の代理人)

 ESPNによると、水原氏は22年末に負けが100万ドル(約1億5000万円)を超え、友人や家族に借金した。23年始めには借金が400万ドル(約6億円)に。昨年10月までに数ヵ月にわたって450万ドルを計8、9回送金し、違法ブックメーカーへの借金を完済したという。

「大谷サイドの後押しがないと実現しない」

 大谷は「僕の口座に勝手にアクセスしてブックメーカーに送金していた」と肩代わりの事実を否定したものの、水原氏の「翔平には言えなかった。信用を失うのが怖かった」との言葉は全てが偽りとは言い切れまい。大谷とは一定の距離感があったように聞こえ、それは金銭面にも当てはまるのではないか。

 大谷は昨年12月、ドジャースと7億ドル(約1050億円)での10年契約で合意に達した。プロスポーツ史上最高額だった。

「ドジャースは水原氏とも契約を結びましたが、30万〜50万ドルの給与は通訳では破格です。水原氏が交渉時に要求しただけではなく、大谷サイドの後押しがないと実現しない金額だと思いました。大谷の契約期間である10年間の合計は最大で500万ドル。ちょうど借金の450万ドルを返済できることは偶然に過ぎないのでしょうか。水原氏は、この報酬を返済に充てる計画だったのかもしれません。実際、大谷には気付かれていなかったのですから、口座から密かに流用した分は、また密かに戻せばいいとか……」(同)

 送金プロセスとともに、水原氏の心の闇の解明が求められる。

デイリー新潮編集部