生々しいやり取り

 アメリカの捜査当局は、MLBドジャースの大谷翔平選手の元通訳・水原一平容疑者が2021年11月以降、大谷選手の口座から本人に無断で1600万ドル(24億4800万円)以上を不正に送金したとして、銀行詐欺の疑いで訴追した。水原容疑者は12日、ロサンゼルスの連邦地裁に出廷後、保釈。来月9日に罪状認否が行われることになっているが、その一方で、水原容疑者が使いこんだカネを取り戻す方法はあるのだろうか。

 水原容疑者の訴追後、彼と違法ブックメーカーとの間の生々しいやり取りが明らかとなった。

「水原容疑者をギャンブルの沼に引き込んでいく経緯には恐ろしさを感じましたね。賭け金の上限を何度もアップしてもらえないかと懇願するあたりとか、“これが最後だ”“母に誓って”などといったセリフなどは映画か小説に接しているかのようでスリリングでした」

 と、担当記者。

手数料を踏まえれば到底無理だった

 2021年12月〜2024年1月までの間に賭けた回数は約1万9000、賭け金は1回あたり200万円弱とされる。彼の“戦績”は、約217億円勝って約280億円負け、差し引き約62億円を溶かしたことになる。

 合法であるか否かにかかわらず、ギャンブルには胴元へ支払う手数料が付いて回る。2016年に発覚したプロ野球・元巨人の選手が関与した野球賭博事件では、賭けに勝った場合、掛け金の10%を手数料として抜いたうえで残りの金額が客に支払われていたとされる。今回、違法ブックメーカーが設定した手数料はハッキリしないが……。

「せめて大谷選手から盗んだ額くらいは取り戻そうと思った可能性はあるのかもしれませんが、手数料を踏まえれば到底無理だったのでは」(同)

 ところで、水原一平容疑者が使いこんだ約24億5000万円を取り戻す方法はあるのだろうか。

取り戻す方法とは

「不可能ではないと聞きました。水原容疑者は大谷選手になりすまして銀行の担当者とやり取りし、一旦は口座凍結されながらもそれを突破したことがあったとされています。本人確認を怠り続けたということについて銀行の責任を追及するわけですね。強気に訴えて、認められれば同額どころかその2〜3倍を取り戻すことも可能なようです」(同)

 ただ、問題は大谷選手の意思だろう。彼は水原容疑者の訴追後、「捜査に感謝している。個人的には一区切りとし、野球に集中したい」とロサンゼルス・タイムズ紙の取材に語っている。

「そのように語っている以上、大谷選手は一刻も早くこの問題から距離を置きたいと考えているでしょうから、銀行側を訴える可能性は極めて低そうですね」(同)

 大谷選手の「野球以外に興味がない」傾向が、水原容疑者につけ込まれる原因だったわけだが、それはまた銀行にとってもありがたい傾向ということになるのかもしれない。

デイリー新潮編集部