パリ五輪のアジア最終予選を兼ねたU-23アジアカップ。準々決勝は25日に行われ、日本は地元カタールを延長戦の末に4−2と下し、出場権獲得まであと1勝に迫った。日本は29日にイラクとベトナムの勝者と対戦する。もう1試合の韓国対インドネシアはPK戦の末に韓国がまさかの敗退。世界初となる10大会連続出場の夢を絶たれた。

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 22日の韓国戦からCB高井幸大以外の10人を入れ替えた大岩剛監督。この11人が現状でのベストイレブンということなのだろう。

 そしてドリブラーの左FW平河悠とファンタジスタのMF荒木遼太郎は“ジョーカー”といったところか。

 試合は開始2分、右FW山田楓喜の左足ミドルが炸裂して日本が先制した。ところが、前半24分と後半4分にいずれもフリーでヘディングシュートを許して逆転される。元々CBに不安を抱える日本だったが、誰も競らないようでは失点も仕方ないだろう。

 ただ、救いだったのは前半41分にカタールのGKユーセフ・アブドゥラーがFW細谷真大へのラフプレーで退場処分になっていたこと。数的優位な状況を生かしてボールを保持することで、カタールの疲労を誘うことができた。

 前半でMF松木玖生を交代させたのは意外だったが、これは前半30分に警告を受けたからか。代わりに起用されたFW藤尾翔太だったが、この日はツキにも見離されたようだ。後半32分と38分、さらに後半45+1分の決定機にシュートをゴール枠に飛ばすことができず、カタールの息の根を止めることはできなかった。

 後半アディショナルタイムは9分、そして大岩監督は45+6分に山田に代えて荒木を投入した。この荒木にしても、平河にしても(後半38分に佐藤恵允と交代で出場)、もっと早く投入してもよかったのではないだろうか。

細谷と内野のゴールは朗報

 ここまでノーゴールながら、延長後半7分に決勝点を決めたFW細谷は「前を向いた時に出してくれたので、後は流し込むだけだった」と荒木のアシストを称えた。

 パスを呼び込む細谷の動き出しと、ボランチであるMF藤田譲瑠チマからのパスを受けた荒木が、ほとんどノールックに近い形で細谷に出した2人の息がピタリと合った決勝点だった。

 残念だったのは、松木の交代理由は不明だが、FC東京でコンビを組んでいる荒木とのプレー時間が少ないことだ。

 2人が一緒にプレーしたのは韓国戦後半の14分間だけ。彼ら2人の息の合ったプレーを大岩監督は知らないのだろうかと疑問に思わずにいられない。

 日本の準決勝の相手はイラク対ベトナムの勝者。イラクは初戦でタイに0−2と敗れたものの、最終戦で首位のサウジアラビアを2−1で退けてベスト8に進出。対するベトナムはクウェート、マレーシアに連勝して早々に準々決勝進出を決めた。

 PK戦とはいえ韓国がインドネシアに敗れたように、今大会は東南アジア勢の台頭が目立つ。準決勝も総力戦での戦いになるだろうが、細谷と内野航太郎のFW陣にゴールが生まれたのは明るい材料だ。

 五輪の出場権を獲得するのはもちろん、2度目となるアジア制覇も視野に入ってきただけに、残り2試合の健闘を期待したい。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮編集部