信じられない光景だった。8日のヤクルト戦。小幡は八回に悪送球と後逸の適時失策を犯した。騒然とする甲子園の三遊間に立ち尽くす背番号38。その心中を想像すると思わず胸が痛んだ。

 「あれだけ練習しているんだから。技術を試合で発揮するためには、最後はメンタルだよ」。馬場内野守備走塁コーチは強調した。現役時代、三塁手部門で2度ゴールデングラブ賞を受賞した名手は技術の土台となる精神の重要性を説いた。

 小幡は翌日に「8番・遊撃」でフル出場した。初回の遊ゴロを難なく処理すると「気持ちが楽になりました」。遊撃に打球が飛ぶたび客席がざわつく異様な雰囲気の中、無失策で守り抜き、四回には犠飛で打点も挙げるなど汚名を返上した。

 普段はおっとりとした口調だが、秘めた強い気持ちをグラウンドで示し「改めてメンタルの重要性に気付かされました」と振り返った。得がたい経験を糧に、木浪という壁に挑み続けてほしい。(山本直弘)