眺めは最高、本格的な料理、しかも老舗で、場所は一等地──。となれば、その飲食店はおそらく高級である。ましてここは世界中から観光客がやってくる京都。少なくとも安価ではないと想像できる。しかし、そんな好条件にありながらもコストパフォーマンスに優れたランチを食べられる中華料理店がある。早速、案内しよう。

河原町で「純北京料理」を食べる

観光地を歩き、お腹を空かせる

 京都を代表する繁華街といえば「河原町」である。風情ある街並みの「先斗町」、居酒屋が立ち並んで活気のある「木屋町」も近い。飲みに行く話が出ると、大抵は「河原町に行こう」という流れになる。社会人はもちろん、大学が多い京都では学生にも人気だ。

京都を代表する繁華街の「河原町」

 今回は、そんなエリアにある店で食事をするという話である。場所は、四条河原町交差点から南200m、徒歩3分の至近だ。

 早速、その店で食事といきたいところだが、まずは街を歩いてお腹を空かせることにする。

 最初に訪れたのは四条河原町交差点から徒歩8分ほどの距離にある「建仁寺」。京都最古の禅寺で、建立されたのは鎌倉時代初期の1202年(建仁2年)。京阪電鉄の祇園四条駅からもすぐにアクセスできるためか、最近は外国人観光客の姿もよく目にする。

四条河原町から徒歩8分ほどの距離にある「建仁寺」

 次は東の方向へ進み、祇園の花見小路通を歩く。伝統的な和風建築が集積、電線も地中に埋められている保存地区。雰囲気たっぷりだが、よく見ると、そこかしこに「私道での撮影禁止」との看板が立っている。どこからどこが私道なのかは判然としないが、周辺の小道ではなくメーンの花見小路通であれば問題はないだろう。

 せっかくだからと、「八坂の塔」にまで足を伸ばしてみる。このあたりで撮影した写真はかなり映える。京都へ旅行に行き、この周辺の様子を押さえておけば間違いない。さらに清水寺まで足を伸ばせば完璧である。

せっかくだからと、「八坂の塔」にまで足を伸ばしてみる

 これだけ歩くと、もうお腹の空き具合もちょうどよい感じになっている。スタート地点の四条河原町交差点に戻り、お店へ向かう。数分後に到着したのは本日の目的地である中華料理店「桃園亭」である。

中華料理店「桃園亭」の外観
入口の両サイドには大きな獅子が飾られている

 入口の両サイドには大きな獅子が置かれており、立派な外観だ。早速、料理店へ入る。不思議なことに1階ではなく、なぜか13階にある。

本格中華をいただく

 エレベーターを降りると、そこは中華料理店。母と一緒だったため、女性従業員に「2人です」と伝えると窓際のテーブルに案内された。

 これが私たちの席。開放的な雰囲気で、眺めは最高。時間は平日の12時過ぎ。まさにランチタイムなのに、スムーズに座ることができた。

窓際のテーブルに通された
開放的な雰囲気で、眺めは最高

 早速、何を注文するかを検討する。ランチメニューの写真を見てもらうとわかるが、これが非常にリーズナブルなのだ。中心の価格帯は1000〜1100円(税込)で、もっとも高くても1600円。このロケーションで、かなりお手頃である。私は「坦々麺定食」(1100円)、母は「酢豚定食」(同)を頼んだ。

ランチメニューに載っている料理はいずれもリーズナブル

 今回、なぜ母と一緒に来たかと言えば、小さい頃、家族でこの店に時々来ていたという話を聞いていたからだ。母が子供の頃というと、もうずいぶん昔の話である。

 店の公式Webサイトで調べると、桃園亭の起こりは大正3年(1914年)。今年、創業110年を迎える計算だ。ここ河原町に三階建ての店を構えたのは昭和20年代、以来、「純北京料理」を標榜し営業を続けている。母が食事していたのは、三階建時代だったのかもしれない。

 しばらくして私の目の前に「坦々麺定食」が届けられる。早速食べたが、坦々麺はもちろん、セットになっている唐揚げや炒飯も本格的でとてもおいしかった。母も満足そうである。

私が注文した「坦々麺定食」

 さて記事の冒頭、近くを散策するという謎の行動をとったのには訳がある。それは桃園亭の窓から、あちこち回った観光スポットをすべて見られるのだ。席にはそれらの位置を示す写真が置いてある。「建仁寺はこれ、八坂の塔はあれ」と探しながらの食事も楽しい。

席には、観光地の位置を示す写真が置いてある。景色と見比べながら食事するのも楽しい

 眺めは最高、本格的な料理、しかも老舗で場所は一等地──。にもかかわらず価格はとてもリーズナブルである。普通に考えると、13階でこれだけの店を持つだけでも相当な賃料がかかるはずだ。

 種明かしをすると、店を経営しているのはこのビルのオーナーなのだ。12階まではマンションになっており、不動産賃貸業がおもなビジネス。そういった事情で、リーズナブルな本格中華を提供できるようである。

 個人的には穴場だと思う。ご興味ある方は、ぜひ行ってみてはどうだろうか。

著者:森本 守人