オイシックス・ラ・大地(東京都/高島宏平社長:以下、オイシックス)は4月18日、自社監修のレシピによるレンジアップの冷蔵総菜が届くサービス「デリOisix」をスタートした。主菜・副菜に1食あたり5種類以上の野菜を使用し、オイシックスならではの強みを生かした。ミールキット商品も好調ななか、なぜ新たな商品の開発に乗り出したのか。

オイシックス・ラ・大地サービス開発本部の荒川桃子氏

調理時間や姿勢が
10年間で変化

 オイシックスでは「Oisix」「らでぃっしゅぼーや」などのブランドを通じて、安心・安全に配慮した農産物や、ミールキットなどの定期宅配サービスを提供している。中核サービスである「Oisix」は「つくった人が自分の子どもに食べさせられる食材のみを食卓へ」をコンセプトに、有機・特別栽培農産物をインターネットや実店舗で販売している。
 2013年からは、約20分で主菜と副菜の2品がつくれるレシピつきミールキット「Kit Oisix(キットオイシックス)」の販売を開始。献立を考えず調理ができる手軽さが受け、23年5月末時点で累計出荷数は1億5000万食を超えるヒット商品へと成長した。
 今回、新たに販売が始まった「デリOisix」は、Oisixの定期会員向けサイトで購入できる。商品は、主菜と副菜のセットが1種ずつ入った「1dayセット」(税込2700円)、主菜と副菜の1食セットが3種類ずつ入った「3daysセット」(同2700円)の2種類で、定期配送は行っておらず、単品での購入となる。
 配送に1日かかる地域の場合、消費期限は到着日を含めて3日。配送に2日かかる地域の場合の消費期限は到着日を含めて2日。メニューの内容は週替わりで、ある週は「肉団子と7種野菜のトマトあんかけ」が主菜、「5種野菜のホットポテトサラダ」が副菜メニューだった。

「デリOisix」で提供される主菜・副菜の一例

取り出して食べるまでの
時間は最短5分

 今回、新たに「デリOisix」の開発に乗り出した背景には、「Kit Oisix」の販売から10年が経つなかで、共働き世帯の増加とともに、利用者が調理にかける時間や姿勢が変化していることが関わっている。
 内閣府が発表した「男女共同参画白書」(令和4年版)によれば、妻が64歳以下の世帯のうち、共働き世帯は約7割にのぼり、「Kit Oisix」の利用者も共働きのファミリー世帯がメインユーザーとなっている。
 オイシックスがOisixの定期会員2055人を対象に行った調査では、「食事を作りたくない/作れない日がある」という設問に対し「4日以上」が30%、「2〜3日」が49%と、計7割近くを占めた。
 オイシックスサービス開発本部のready to eatセクションでマネージャーを務める荒川桃子氏は、利用者に実施したインタビューから「Kit Oisixのリリース当時は、調理時間20分でも『時短』と呼べたが、最近は包丁を出すことすら面倒に感じているお客さまが現れ始めている」と話す。
 このような背景から「デリOisix」は共働きのファミリー世帯をターゲットとして、献立の考案や調理にかかる時間の負荷をさらに減らす「超タイパ」(タイムパフォーマンス、時間対効果の意)をコンセプトとして開発された。
 商品は冷蔵の状態で発送され、電子レンジで数分温めたのち、盛り付ければすぐに食べることができる。商品を取り出してから食べるまでの時間は最短5分程度。調理に悩む時間を減らすため、商品はあらかじめ味付けがなされている。またパッケージを使い捨て容器として使うこともできるため、盛り付けずにそのまま食べれば、片付けや皿洗いの時間も省略できる。

オイシックス,デリ
「デリOisix」購入ページ

最大の競合は
利用者の「自炊」

 「時短」以外の部分でも、レシピの作成や使用食材について、オイシックスが持つ強みを生かしている。
 「1dayセット」「3dayセット」はどちらも、主菜・副菜に1食あたり5種類以上の野菜を使用した。
 「たつやのにんじん」(熊本県産)や「旨み!香り!色!濃い濃い舞茸」(埼玉県産)など「Oisix」の人気野菜や、「Kit Oisix」で提供する人気の野菜も使用したメニューを試すことができる。
  「デリOisix」は、まずOisix会員に向けて販売を開始し、その後、広告出稿やメディア露出を増やして新規ユーザーの獲得を図るとしている。26年度末には、累計販売1000万食をめざす予定だ。
 日本惣菜協会が発行する『2023年度版 惣菜白書』によれば、国内中食(総菜)市場の売上は8.7兆円(12年度)から10.1兆円(21年度)と、9年間で116%に伸長している。今後も成長が見込まれる市場だが、総菜の需要をめぐっては駅チカ・駅ナカにある総菜専門店や家事代行サービスなど、競合サービスの台頭も目立つ。そうしたなかで、「デリOisix」はどのようにユーザーを獲得していくのか。
 荒川氏は「お客さまへのインタビューをもとに、最大の競合として我々が想定しているのは『自炊』。忙しくて時間がない日でも、レシピを見ずにささっと何かをつくっている方は多い。そうしたお客さまに、自炊の代わりに利用してもらいたいと思っている」と断った上で「『デリOisix』は『Kit Oisix』など、ほかの商品と組み合わせて1セットから購入できる。平日の夕食代わりからハレの日のイベントメニューなど、幅広いニーズに応えられることが強みだ」と話した。
 「Kit Oisix」で培われたノウハウも武器に、今後「デリOisix」がどのようにサービス拡大を遂げていくのか、注目したい。

著者:松岡 瑛理