ひと目見て薄いことに気が付き、手に取るとその軽さに驚く。事前の予想では、あまりに早いM4の登場に「あまり処理速度は上がっていないのでは?」と思っていたが、ベンチマークを計測してみるとそのパフォーマンスの高さに驚いた。とはいえ、円安もあって超高価だが、製品の位置づけは『プロ向け』から『超プロ向け』になった印象で、価格に見合った、むしろそれ以上と言ってもいい製品に仕上がっている。5月15日の発売に先駆けて預かった製品に基づく先行レビュー。

iPad Proシリーズ史上最大のモデルチェンジ

筆者が預かった製品は、iPad Pro(M2)13インチの1TBのセルラーモデル。価格にして35万8800円。

円安もあって価格はズシリと重いが、物理的な重さは前モデルより102g軽い582g(Wi-Fi+セルラーモデル)。かなり軽く感じる。厚さも1.3mm削減されている。

左が従来のiPad Pro 12.9インチ(第6世代)、右が新しいiPad Pro 13インチ(M4)。かなり薄くなっていることが分かるだろう。

以前はMagic Keyboardを付けると、かなり重く感じたものだが、この範囲なら受け入れられる。実際にはキーボード側も19g軽くなっている(実測値)ので、トータルで121gの軽量化だ。これは充分に体感できる軽さで、だいぶ助かる。

スペックは、GeekBench 6で試してみたいが、ご覧のように前モデルのiPad Pro(M2)と比べて、マルチコアのCPUスペックで50%も速くなっている。M3の分を1世代スキップしたとはいえ、わずか1年半で50%の性能向上には驚く。

ちなみに、ちょっとした動画編集や、写真の加工などを行ってみたが、どちらにしても十二分に高速に動作するので、ほぼ違いは感じなかった。多くの人にとって、M2でも不満のないところだと思う。

既存のiPad、Macの中でもっとも美しいディスプレイ

にもかかわらず、M4世代のチップを導入することになったのは、タンデムOLED搭載のディスプレイを駆動するための、ディスプレイエンジンが搭載されているからだろう。

まだ、M4世代のチップの歩留まり率はまだ高くはないようで、256GB、512GBモデルのCPUが3コアになっていることからもそれはうかがえる(不具合のあるコアを動作させず、コアの少ない商品としてラインナップしている)が、タンデムOLEDを駆動するためにはM4が必要だったとうことだ。

実際、タンデムOLEDディスプレイは驚くほど美しい。

特に高品質な写真の加工や、動画の編集などを行っている人は、このディスプレイのためだけにでもiPad Pro(M4)にする価値はあると言えるだろう。コントラスト比が大きく、黒が深く黒く、明るい部分が十分に明るく、その間の階調性が豊かになっている。

左がiPad Air(M2)、右がiPad Pro(M4)。写真だと、iPad Pro(M4)の方が白飛びしているように見えるかもしれないが、実際には明るい部分も階調があって圧倒的に美しい。また、暗い場所でみると、iPad Air(M2)の方が黒い部分がわずかにグレーだ。iPad Pro(M4)はしっかりと黒に見える。

絵を描く人にとっては、Apple Pencil Proが新型を買う理由になる

さらに、iPad Pro(M4)を買う価値を高めるのは、Apple Pencil Proだ。

これは絵を描く人は必携。

従来のApple Pencil(第2世代)と同じ価格、同じ外観(ロゴ以外)で、スクイーズ、バレルロール、触覚フィードバックという3つの新機能が設けられている。

スクイーズは、強く握るとペン先に小さなメニューが現れる(コンテキストメニューのような感じで)機能。まだ、アプリ側が対応していないものが多いので、純正アプリのフリーボードで試してみたが、とても便利そう。FrescoやProcreateも対応を表明しているので、楽しみに待ちたい。

バレルロールは、平筆やカリグラフィーペンのように、ペン先に方向性が出る機能。表現力は増すのだが、Apple Pencil Pro自体の物理的形状は(1面がカットされているとはいえ)方向性が分かりにくいので、方向が分かるグリップなどがあった方が使いやすいかもしれない。このあたりは、絵を描く人の間で、アフターマーケット製品の利用が模索されそう。

Magic Keyboardの打鍵感も向上

Magic Keyboardもアップデートされ、iPad Pro(M4)専用のものになった。

パームレスト部分など、本体上面がアルミ製むき出しになり(従来のものはアルミボディにコーティングを施していたように見える)、キータッチの剛性感が上がった(ような気がする)。キースイッチ単体で押してみると、従来のものと変わらないような気がするので、パームレストに触った感覚も含む総合的なものだとは思うが、なんとなく打鍵感は向上している。トラックパッドが広くなって、ファンクションキーが設けられたもの嬉しい。

左が旧世代のMagic Keyboard。右がiPad Pro(M4)専用のMagic Keyboard。

『プロ用』と『超プロ用』

iPad Pro(M4)はプロ中のプロのためのデバイスへと進化した。

ただ、日本では少々高価に過ぎるので、本当にその価値を必要とする人が購入することになるだろう。

ご覧のように外部ディスプレイもサポートしており、USB-Cケーブルで接続したディスプレイに画面を表示することもできる(つい、外付けディスプレイの画面にも触ってしまうが)。

スペック的にはiPad Air(M2)でも十分に素晴らしいし、(コントラスト比が高く、彩度の大きな)美麗なグラフィックを扱う人以外の多くは、iPad Airでも大丈夫なのではないかと思う。

iPad Pro(M4)はiPadのトップエンドモデルとしてその性能を高めて『超プロ用』となってきたので、実際にはiPad Air(M2)が『プロ用』という位置づけになってきたのかもしれない。

(村上タクタ)

著者:村上タクタ